研究課題/領域番号 |
24760178
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
阿部 陽香 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (70462835)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱物性 / 比熱容量 |
研究概要 |
本研究の目的は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた断熱型熱量計を開発し、ナノ粒子等の直接的な微小熱容量測定を実現することにより、低次元系における物質の熱的性質を明らかにすることである。平成24年度の主な研究実施計画は、①MEMS式熱量計の設計を検討する、②MEMS式熱量計での測定を行なうための計測システムの構築、の2点であった。①に関しては、これまで研究されているMEMS式センサーの調査研究を基に、MEMS熱量計に適した温度センサー、ヒータ、サーモパイルなどの形状・構造の検討を行い、設計に着手した。②に関しては、断熱制御に必要なPID制御をソフトウェア方式にすると共に、リアルタイム自動制御可能な比熱容量計測システムの整備を進めた。 さらに今年度は、示差走査法によるバルク、薄膜、微粒子の比熱測定を実施し、その結果を比較することにより、その測定の問題点の抽出を行った。対象試料と標準試料との比較測定により熱容量を算出する示差走査法は、比熱の簡便な測定法として広く用いられている。この方法による薄膜、微粒子等の比熱測定を検証することは、今後本研究を進めるにあたり、有用な情報である。初めにモリブデン薄膜(厚さ383nm)とバルクのモリブデンの測定を行なった。測定結果より、両者の測定の不確かさを求め、比較したところ、モリブデン薄膜の不確かさは非常に大きく、評価が困難であることが明らかとなった。本結果については、国際会議(ICCCI2012)においてポスター発表を行った。さらに、モリブデン粒子についても同様の測定を行い比較を行ったところ、薄膜と類似して、不確かさが大きく、評価が困難であるという結果を得た。これらの結果から、薄膜、微粒子の比熱測定に関しては、従来の汎用的な測定法では評価が難しく、本研究の意義が改めて明らかになったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画はおおむね計画通りに進められた。かつ「研究実績の概要」にも記述した通り、従来の比較測定法では、薄膜、微粒子の熱容量の精密測定は困難であることを明らかにしており、本研究課題の必要性も確認できた。現在までの研究目標は達成していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に設計したMEMS式熱量計を試作し、標準物質等のバルク材料を用いて、測定の健全性評価を実施する。初めに製作するMEMS式熱量計は比較的大きいサイズに設計し、従来の断熱型熱量計と同試料を測定し、測定結果を比較する。MEMS式熱量計の動作が良好である場合は、薄膜、ナノ粒子等の比熱容量測定を試行する。熱量計の動作が良好でない場合は、熱量計の改良を重ね、問題点の改善に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、主に、MEMS用SOIウェーハ等材料費、フォトリソグラフィーマスク、MEMS熱量計製作費、測定用試料(微粒子・バルク材料等)、バルク試料加工費、金属部品加工費、リード線等部品費等に使用する予定である。
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