研究課題/領域番号 |
24760179
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本田 真也 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90548190)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 複合材料・物性 / スマート構造 |
研究概要 |
本研究では,小型精密デバイスの高速化・高精度化を目標として,スマートマイクロ複合材の振動制御性能向上に関する,要素技術を開発することが目的であり,平成24年度実施計画は,「1.スマート複合材の統合最適化手法の開発」および「2.レーザー加振を用いたマイクロ・スマート複合材の振動制御システムの構築」の2点の基礎技術を構築することであった. 「1.スマート複合材の統合最適化手法の開発」に関しては,振動制御性能の向上を目的とし,積層複合材の繊維配向角度,制御用アクチュエータの配置,制御システム内の重みを同時に設計する手法を提案した.最適化手法として,遺伝的アルゴリズムを用い,計算負荷が大きい有限要素解析(FEA)を最適化計算中で繰り返し実施することを避けるため,振動制御システムを構築する上で必要となるモーダルパラメータ(固有振動数,固有振動モード)を含んだデータベースを予め作成し,最適化計算の効率化を図った.実施計画では,データベースの作成手法に高精度なメタモデルを適用する予定であったが,本年度はメタモデルの適用によるデータベース作成の実施までは至らなかった. 「2.レーザー加振を用いたマイクロ・スマート複合材の振動制御システムの構築」に関しては,極めて短時間に生じるレーザーアブレーション現象を構造物の加振力として利用が,通常の加振器やインパルスハンマでは加振困難な微小構造物に対して効果的であり,より高周波帯域まで励起可能であることがわかった.また,加振応答をレーザードップラー振動計により非接触で測定することで,計測機器付加による質量増加も抑制することができた.振動制御実験による結果は数値計算結果と同様の傾向が示されたが,実験精度や数値計算による実現象の再現性を向上する必要があることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」に示した通り,当初計画では,「1.スマート複合材の統合最適化手法の開発」において,統合最適化に用いるデータベースの作成の効率化を図るため,統計理論に基づいて空間データを補完するKringingモデル等の高精度なメタモデルを適用する予定であったが,本年度は使用するモデルの検討および選定にとどまった. しかしながら,次年度の研究計画の一部であった柔軟圧電材(PVDFよりも高出力のMFC)を使用したシェル構造物に関する数値計算および実験を前倒しで実施できたことや,「2.レーザー加振を用いたマイクロ・スマート複合材の振動制御システムの構築」に関しても,改善の余地が残されているものの,基礎的な技術は確立できたため,当初の計画通り,順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であり,研究の推進方策は以下の通りである. 今年度,実施に至らなかった,モーダルパラメータ(固有振動数,固有振動モード)を含んだデータベースの効率的な作成方法を確立する.当初計画していた高精度メタモデルを適用することを含め,ニューラルネットワークの一種である自己組織化マップ(SOM)の援用による,データベースの自己クラスタリングなど,多方面から効率化の検討を行う.さらに,実験結果との適合性を高めるため,数値計算において非理想的な境界条件や試験片作成誤差を含んだ数値計算モデルの構築,構造物への影響は小さいとしてモデル化する際には考慮していなかったアクチュエータとなる圧電材自体の剛性や質量を数値モデルに含めるなどの工夫を行う. また,マイクロスマート複合材の振動制御実験に関する基礎となるシステムは,本年度に構築できたため,更なる実験精度や信頼性の向上を目指して,制御実験システムの改善を行う.具体的には,スマート複合材の把持治具の精度向上や,アクチュエータ接着の高精度化などがあげられる.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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