研究課題/領域番号 |
24760180
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
菅原 佳城 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10422320)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 絶対節点座標法 |
研究概要 |
申請者がすでに提案しているANCFによるモデルを用いた制御系設計手法における制御則の導出はμ設計をもとにした設計法であり,制御則導出時のイタレーション計算にかかる時間を抑えることで効率のよい設計法の構築するために,ANCFによって得られたモデルに対して,低次元化を試みた.提案する制御系設計手法に用いられるモデルは,ANCFによるモデルの一つであるT1-L1モデルであり,その特徴を利用することでモード合成法に基づく方法での低次元化手法を提案した.提案手法については,2次元柔軟梁を対象として数値解析によりその有効性を示しており,さらに低次元化時の重要なパラメータである採用モード数を変化させながら制御則導出時のイタレーション計算に要する時間について比較を行い,提案手法を適用しない場合に比べて,適用時には約100倍の時間短縮効果があることを示した. また,申請者がすでに提案しているANCFによるモデルを用いた制御系設計手法は,モデルが同じ構造であれば,2次元柔軟梁に限らず他の対象にも適用できる可能性がある.そこで,3次元柔軟梁に注目してANCFによるモデルを構築することで,提案手法が適用できることを示し,数値解析によってその有効性を示した.しかしながら,わずかな「①偏差が残る」および「②制御則導出のためにイタレーション計算に時間がかかる」といった問題点が発生しているが,①については制御入力部のモデルの表現で対応可能であり,②については前述の提案する低次元化手法で対応可能であり,十分に改善可能であることを明らかにしている. さらに実験実証をおこなうにあたって,2次元柔軟梁および3次元柔軟梁の両方の実験を可能とするシステムを構築し,アクチュエータの動作確認までを完了しており,実験実証のためには計測システムの比較的容易な改善を残すのみとなっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低次元化手法に対する提案は順調に進めることができており,さらにパラメータについての提案手法の様々な特性を調べることができたため,予定以上の進捗があったと考えられる. また,3次元柔軟梁への提案する制御系設計手法についても,精度に関する問題や低次元化の必要性などが発生したが,数値解析によって提案手法の有効性を示すことを達成しており,それに加えて新たな課題を見つけることができたという意味でも順調な進捗であったと考えられる. 24年度においては2次元柔軟梁の制御系設計に対する実験装置を構築して実験実証までを完了する予定であったが,25年度に予定している3次元柔軟梁の実証実験と共通する装置が多いため,両方の実験に使用できる実験装置の構築を重点的におこない,おおよその動作確認まで完了した.当初目的の実験実証までには至らなかったが,装置を汎用性あるものとして構築したために,25年度の作業を大きく省略できることが考えられるため,総合的な進捗をみるとおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に予定していた2次元柔軟梁を対象とした提案する制御系設計手法の実験検証を行う.残された作業は計測システムの精度向上であり,その作業の完了に伴い,導出した制御則についてのプログラムを構築し,シミュレーション結果と実験結果の比較を行うことで,提案手法の評価を行う. 3次元柔軟梁への提案手法の拡張は完了しているが,いくつかの問題点が残っており,その問題点に対する対策を検討する.その後,平成24年度に構築した実験装置を用いて3次元柔軟梁に対する実験実証を行う.また,提案手法は重力の影響を考慮した制御系設計手法ではないが,実験装置そのものを下向きに落下させることで重力の影響をキャンセルした状態で実験ができる装置を既存の装置に追加で組み込む.十分な落下距離を確保はできないため,その制限によって実験実証ができない場合は,微小な運動を仮定した上で,重力を復元力の一部と仮定した上で制御系を構築し,それに対して数値解析を改めて行い,実験実証との比較によって提案手法の有効性の確認を行う. 提案する制御系設計手法は3次元柔軟梁への拡張を確認しているが,そのような3次元柔軟梁を複数組み合わせた構造に対して,さらに提案する制御系設計手法を拡張ができることを示している.そこで,そのような構造の一種としてグリッド状の膜構造物を対象として提案する制御系設計法および平成24年度に提案した低次元化手法を拡張して,数値解析により問題点の明確化とその問題点に対する対策を検討した後に実験検証を行う.その際には,3次元柔軟梁の実証に用いた実験装置を拡張することで,グリッド状の膜構造物に対する実験装置を構築する.
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次年度の研究費の使用計画 |
2次元柔軟梁および3次元柔軟梁を対象とした計測システムの精度向上が必要であるため,そのための歪ゲージと歪アンプシステムもしくはレーザー変位計などのセンサを購入し,さらに計測するための治具等を製作する予定である(200千円を予定).これは後に必要となるグリッド状の膜構造の制御のための実験装置に対しても拡張可能なものとして購入および製作を行う. グリッド状の膜構造の制御のためには,既存のアクチュエータを固定するための治具の製作(100千円を予定)が必要である上に,さらには早い計算速度および複数のチャンネルをもった計算機が必要とされることから,DSPを購入予定である(400千円を予定). 3次元柔軟梁およびグリッド状の構造物に関する実験を行うにあたって,重力の影響をキャンセルするために,実験装置そのものをある程度の距離(1m以下)で落下させる必要がある.その際に,全体が垂直に運動するような構造を構築し,着地時の衝撃を緩和する仕組みが必要である.そのような構造を構築するにあたって,スライディングジョイントや緩衝剤を用いた装置を構築する(150千円を予定). 提案手法による実験結果をより多角的に評価するためにも,3次元柔軟梁およびグリッド状の膜構造の挙動に関して画像を用いた解析が必要となるため,そのような柔軟構造についての画像を用いた解析に関する様々な知見を有する青山学院大学の小林信之教授に装置についての相談をおこなったり,実験装置の借用をするために訪問を行う予定である(国内旅費として150千円を予定). 低次元化に関する提案手法についてはすでに国際会議(ECCOMAS Multibody Dynamics 2013)にて発表を予定しており,会議への参加費および旅費として研究費を使用する予定である(400千円を予定).
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