研究課題/領域番号 |
24760182
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
関口 和真 東京都市大学, 工学部, 助教 (80593558)
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キーワード | 機械力学・制御 / 制御工学 / 劣駆動 / 非線形システム解析 / 非線形システム制御 |
研究概要 |
本年度の研究業績として以下の成果を得た. (1)角運動量に支配される宇宙空間飛行システムについて 初期角運動量の存在する環境下で2つのリアクションホイールを用いてスペースクラフトの姿勢を制御する問題に対し,角運動量保存則を用いて初期角運動量と釣り合う入力が存在する姿勢を解析し,2つのリアクションホイールを用いて静止できる姿勢とできない姿勢が存在することを明らかにした.さらに静止した姿勢においてアンテナを向けることができる領域はアンテナ軸と故障したリアクションホイール軸のなす角に依存することを明らかにすると共に,リアクションホイールが故障した場合にアンテナを安定的に向けることができる領域を最大化することができるアンテナ配置を提案した.さらに,姿勢表現の一つであるロドリゲスパラメータを,固定の比を保ちながら発散させると対応した一つの姿勢に収束するという性質に着目した制御則を構築することで,静止可能な任意の姿勢を安定化することを可能にした. 任意のアンテナ配置を考えた場合,静止可能な姿勢では目標とする方向へアンテナを向けることができない場合が存在する.このような場合に対しては,アンテナ軸周りの回転を残す形でアンテナを目標方向へ向ける制御器を構築した. (2)重力場に支配される地上飛行システムについて 3入力を持つ地上飛行システムの一例として均等に配置された3つのロータによって飛行するTrirotor UAVを提案し,そのシステムの平衡点解析,可制御性解析をおこなった.その結果ホバリングができないシステムであることを明らかにすると共に,入出力線形化に出力関数を入力とみなしたゼロダイナミクスの離散制御を組み合わせる手法を提案することで,任意の位置を周期的に回る運動や,自転しながらその場にとどまる擬似ホバリングという運動が可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
角運動量に支配される宇宙空間飛行システムに対しては,2入力スペースクラフトの平衡点や実現可能な姿勢についての詳細な検討をおこない,フェイルセーフを意識した提案をおこなった.また,重力場に支配される地上飛行システムに対しては,3入力UAVの運動生成について具体例を通して考察し,解析を通して実現可能な運動を明らかにするとともに,その運動を実現する具体的な制御手法を提案した.以上に挙げた研究は昨年度の研究計画で実施を予定していたものであり,得られた研究成果は学会などに発表してきた.以上の理由から研究計画に対して順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
宇宙空間飛行システムについては,前年度までにアクチュエータ故障によって劣駆動状態となる1入力,2入力の場合についてそれぞれ可制御性解析をおこない,実現可能な運動を生成する制御手法を提案している.実用での運用を考えると,更に外乱やモデル化誤差についてもロバストな制御系を構築する必要があると考えられる.外乱は主に太陽輻射圧や大気抵抗トルク,地磁気トルクなど力,トルクの次元で作用する.またモデル化誤差としてはリアクションホイールが生成できるトルク,角速度の上限やそのダイナミクス,慣性主軸からのホイール取付軸のずれ,物理量の誤差などが考えられる.そのため運動学モデルを考慮して設計していた制御則を動力学モデルに拡張し,適応的な制御を組み合わせることで外乱などに強い制御則構築をおこなう予定である. 地上を飛行するシステムとして3入力では時不変連続状態フィードバックによって任意の平衡点を安定化することはできないことが知られているが,昨年度までに特殊な構造を持つUAVシステムについては不連続制御器を用いて擬似ホバリングという運動が可能であることを示した.更なる発展として提案する不連続制御器で任意の平衡点を安定化するTrirotor UAVの構造と具体的な制御則の構築について検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な計算機環境の保守や消耗品購入を抑えることができたため. 平成25年度は効率的に研究費を使用できたため,平成26年度予算として残すことができた.平成26年度は提案する制御手法の実験的な検証を目指し,実験機制作に予算を使用する予定である.また,昨年度得られた成果をまとめて論文として発表する予定であり,外部に向けて研究成果を発信するためにも研究費を使用していく予定である.
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