本研究では,機械・構造物と周囲の環境の間を伝達する鉛直方向振動の低レベル化を目指し,従来よりも大幅に小型化・簡便化・高性能化した垂直方向パッシブ防振装置の開発を行った.以下,研究計画に沿って,研究成果の概要を述べる. まず,L字型はりが座屈する際の非線形復元力特性を有限要素法により数値解析し,2つの座屈モードにおける復元力特性の違いを定量的かつ詳細に検証した.また,この解析に基づき,適切な防振対象を搭載した系の振動伝達率の周波数応答の数値計算を行い,防振装置としての有効性を検証した.はりの構造を種々に変化させて解析を行った結果,装置の小型化と3次以上の固有振動数を高い振動数領域に遷移させる構造を見出した.また,解析に基づき実験装置を製作し,復元力特性の計測,ハンマリング試験およびスイープ加振試験による周波数応答の計測を行った.復元力特性の実験結果は,数値解析とよく一致した.また,周波数応答の計測結果も,実験装置のフレームの固有振動数によるいくつかの共振ピークを除いて,実験結果は高次の共振ピークまで数値解析の結果とよく一致し,解析および実験の妥当性が示された. 次に,静的復元力の実験結果から復元力の非線形性を同定し,装置を1自由度非線形系にモデル化した.このモデルに対し数値解析を行った結果,分数調波共振の発生を確認した.また,装置の自由振動の計測結果を用いて,自由振動の瞬時振動数を求めた結果,本装置が,静的平衡点近傍の非対称非線形性によって漸軟非線形特性を示すことを確認した. 最終年度までに防振テーブルの製作までは至らなかったが,これまでの成果をもとに,今後,実用的な防振テーブルの製作を行う予定である.また,現在,2次の固有振動数は低い振動数領域に存在する構造となっているが,これを高い振動数領域,あるいはより低い振動数領域に遷移させる構造を検討する予定である.
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