研究課題/領域番号 |
24760191
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
岩村 誠人 福岡大学, 工学部, 准教授 (90341411)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | マルチボディダイナミクス / 柔軟マニピュレータ / 最適制御 / リカーシブ法 |
研究概要 |
機械システムの最適制御問題は,生産性や省エネルギー性に直結する重要な問題である.本研究の目的は,フレキシブルマニピュレータや柔軟宇宙構造物のように機構中に弾性体を含む柔軟マルチボディシステムに統一的に適用することができる最適制御計算法(最適軌道計画アルゴリズム)を構築することである.最適制御問題の数値解法の流れは概略,1)制御入力を仮定する,2)動力学シミュレーションを行う,3)軌道に沿って感度解析を行う,4)評価関数が減少するように制御入力を修正する,5)収束判定条件が満たされるまで2に戻る,のようになる. 上記のように最適制御問題を解くためには,動力学シミュレーションを繰り返し行う必要があるため,計算効率の良い順動力学計算法が不可欠である.そこで,平成24年度はまず柔軟マルチボディシステムの高速順動力学計算法の開発を行なった.開発した計算法は,マルチボディダイナミクスの分野で用いられているフローティング・フレーム法とロボティクスの分野で提案されているリカーシブ法を組み合せたものであり,汎用性と高速性を兼ね備えたアルゴリズムとなっている.次に,3)で必要になる感度解析法について検討を行なった.従来,感度関数の計算には数値微分が用いられることが多かったが,精度や計算効率の面で問題があった.そこで,提案したリカーシブ動力学計算法を利用して,厳密かつ効率的に感度関数を計算することができる手法を新たに開発した.さらに,開発したリカーシブ動力学計算法と感度解析法,および先に提案していた階層勾配法というロバストな最適制御計算法とを結合して柔軟マルチボディシステムの一つの最適軌道計画アルゴリズムを構築した.ただし,現状では一部平面システムに対する定式化となっているため,今後さらに拡張していく必要がある.また,次年度は提案計算法に基づくソフトウェアの開発も進めていく予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した通り,平成24年度の研究目標は,柔軟マルチボディシステムのリカーシブ動力学計算法を開発すること,そのリカーシブ動力学計算法を利用した感度解析法を提案すること,およびそれらと先に提案している階層勾配法というロバストな最適制御計算法とを組み合わせることにより汎用的な最適軌道計画アルゴリズムを構築すること,であった.現状では一部平面システムに対する定式化となっているが,おおむね上記の研究目標は達成できた.また,提案計算法に基づくソフトウェアの開発にも既に着手しており,研究は当初の計画通り順調に進展していると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究において,柔軟マルチボディシステムの最適軌道計画アルゴリズムの中核部を構築することができた.しかし,一部平面システムに対する定式化となっている,考慮することができる関節タイプや力要素が限られている,等の問題があった.そこで,平成25年度は提案計算法の適用範囲のさらなる拡張を目指したい. また,提案計算法の妥当性や実用性を,数値シミュレーションおよび実機実験の両面から検証していく予定である.数値シミュレーションには,現有の汎用動力学シミュレーションソフトウェアSIMPACKを用いる.ただし,現有のSIMPACK基本モジュールでは剛体マルチボディシステムの数値シミュレーションしか行うことができないため,申請している弾性体モジュールを追加して柔軟ボディも取り扱えるようにする必要がある.実機実験は,現有の2自由度柔軟マニピュレータ実験装置を利用して行う. さらに,提案計算法に基づくソフトウェアの開発もすすめていく.まず,提案計算法の実装に適したデータ構造等を明らかにし,C++によってソフトウェアを作成する.専門的な知識を持たないユーザでも容易に使用できるユーザインタフェースについても検討する.プログラム開発および数値シミュレーションは購入済みのワークステーションを用いて行う. 以上の研究は,福岡大学の大学院生および海外共同研究者と協力して遂行する.研究成果は,国内学会および国際会議で発表し,学術雑誌に投稿して広く利用してもらえるようにする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に,論文投稿料として100,000円を支出する予定であったが,研究成果を学術雑誌に投稿するまでには至らなかったため使用しなかった.一方で旅費は当初の予定よりも58,745円多く必要であった.その結果,繰越金41,805円が発生している.この繰越金は,平成25年度に論文投稿料の一部として使用する予定である.
|