前年度までに,スマート羽ばたき翼の規範とするために実際のハチドリのホバリング飛行を多摩動物公園で 4 台の高速度カメラで撮影し,翼運動と翼面形状の時間変化を計測した.またこの計測結果に基づいてハチドリと同じ周波数(約 30 Hz)で羽ばたく固定羽ばたき機構を製作し,単純な 1 自由度の羽ばたき翼であっても翼膜にたるみを付けることでハチドリの打ち上げ中の翼と同様の翼面変形と空気力を発生することが分かった.この成果は国際学会と国内学会で発表した. 今年度は,羽ばたき翼まわりで生じている非定常空気力学を調べるために,実際のハチドリの翼形状と翼運動に基づいて数値流体シミュレーションを行った.その結果,翼端から放出される渦が羽ばたきストロークごとに下方にリング状の渦を形成し,そのリング渦の内部で空気が下方に強く流れる様子が明らかになった.この成果は国際学会で発表した. ハチドリのような羽ばたきを軽量で単純な機構で実現するために,1自由度で羽ばたく翼に対して,翼面にたるみを与えて受動的に翼面をフェザリング変形させる方法と,前縁フレームの付け根に回転ジョイントを追加して翼全体を受動的にフェザリングさせる方法を試験した.回転ジョイントは,ストッパー機構によって最大フェザリング角を制御した.その結果,たるみ翼面によって空気力を増大し,ホバリングに十分な揚力を発生できることが分かった.また,前縁フレーム付け根の回転ジョイントによって,わずかな回転自由度でも消費電力を減少させることができ,適切なストッパー角度を選ぶことで効率(空気力 / 消費電力)を向上できることが分かった.この成果は国際学会で発表予定である.
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