本年度は,開発した人腕サイズの7自由度ロボットアームによる外力緩衝実験,幾何拘束のある手先作業への応用実験,効果的な外力緩衝のための関節粘性調査を実施し,以下の成果を得た. 1 定置作業における外力緩衝時の手先精度調査:手先に関する位置3変数,姿勢3変数,位置姿勢6変数の維持のために作業座標制御を適用し,外力緩衝実験を行った.外力の無い場合に手先位置誤差1mm,姿勢誤差0.1度を保証する制御設定に対し,外力緩衝時の最大誤差は3mm,0.3度であった.このとき,指令変数の数の違いに対し,最大誤差の違いは見られなかった.また,外力への倣い動作に必要な力は,3変数指定時で5kgf(非制御時と同程度),6変数指定時で8kgfとなる結果を得た. 2 追従作業における外力緩衝時の手先精度調査:手先に関する位置3変数を15cm・6秒間の往復運動で与えた際の外力緩衝実験を行った.外力の無い時の最大手先誤差0.17mmに対して外力緩衝時は0.21mmとなり,手先への影響は0.05mm以下となる結果を得た. 3 幾何拘束のある手先作業への応用実験:姿勢情報の誤差で過剰負荷が生じるクランク回し作業において,手先姿勢を制御せずに冗長自由度系とする手法による過剰接触負荷の緩衝効果を調査した.すべての自由度を指定した場合に比べ,クランク姿勢誤差に起因して発生する各関節の過剰トルクを大幅に削減する結果を得た. 4 効果的な外力緩衝のための関節粘性調査:制御変数の精度を保ちつつ,外力を効果的に緩衝する関節粘性設定を調査した.実験結果より,制御部付近の関節の粘性を低く,土台部付近の関節の粘性を高くした際に,効果的に外力緩衝効果が得られることを明らかにした. これまでに得た成果より,本手法は,人などに接触しながらロボット作業を継続させたい場面において,力覚センサに依らずに実施できる点で有効であるといえる.
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