研究課題/領域番号 |
24760204
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
川原 知洋 九州工業大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20575162)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロマシン / 微生物 / 計測工学 / 生物・生体工学 |
研究概要 |
・マイクロツールの高速化:SiとNiのハイブリッド材料で作製したマイクロツールに対し,幅が8μmの微小溝構造を加工することで,楔効果による流体摩擦の大幅な低減を行った.作製する溝を設計するために,数理モデルを構築し最適化を行うことで摩擦の低減に成功し,結果的にマイクロツールの大幅な高速化を実現し目標値を達成した(最大駆動速度:250mm/s,最大駆動周波数:100Hz). ・力計測センサのアセンブリ方法の検討:マイクロツール先端に取り付ける幅5μmの力計測機構について,ピンセットによるアセンブリの際に頻繁に壊れるという問題があった.そこで,マイクロツールをチップ内へ組み込む際,より効果的なアセンブリ方法について検討を行った.実際に,ノッチ機構によりツール自身の力でツールを切り離す方法について新たに提案し,マイクロ流体チップを完全に組み立て後に,ツールを切り離すことができることを示した.これにより,微小なセンサを壊すことなくツールをマイクロチップの内部に実装できることを確認できた.また,切り離したツールがマイクロチップ内を自由自在に移動できるようになったため,ツール自体の作業性も大幅に向上した. ・計測制御システムの構築:オンライン高速ビジョンを導入し,ロボットシステムと組み合わせることでシステム全体として1000 Hzで駆動可能なプラットホームを構築した.これにより,従来は30Hzの上限があったシステム全体の駆動周波数を大幅に向上させることができた. ・珪藻の定量評価:構築したプラットホームを用いて珪藻の計測を行い,印加した力とそのときの珪藻の刺激応答の関連性を詳細に調査した.取得した動画の画像処理を行うことで,印加した力の履歴,及び,珪素中の葉緑体凝集の程度について定量的に調べた.結果として,印加力の絶対的な大きさと凝集の程度に高い相関があることをはじめて明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,オンチップで単一珪藻に対してマイクロツールを用いて高速に力学的な刺激を加え,その時の珪藻のダイナミックな挙動を計測することで珪藻の機能解明及び機械インピーダンス特性を測定することを目的としている.マイクロツールを高速化することが第一の目標であり,今年度は高速化について順調に目標値を達成しており,また,計測制御のためのプラットホームの構築も行っていることから,順調に研究が進んでいると言える.また,成果についても国内外の学会や論文誌にて多数発表することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の点について研究を進めていく. ・ロボットの高速化と力計測機能の統合:これまで別々に研究を進めていた機能を一つのツール上に共存させることを目指す.これに伴い,従来は力計測に静的なモデルを用いていたが,高速に微生物に加わっている力を正確に計測するために,動的な力計測のモデルを導入する.最終的には画像処理を用いることでリアルタイムで印加力を計測することを目指す.また,ツールの作成方法については,ツールの力計測機構部分を保護しつつ,駆動部分のみに溝を形成することが課題となる.プロセスの条件や順番を最適化することで,高速化と機能化を同時に実現する方法について検討を行う. ・珪藻の凝集特性の評価:これまでに凝集特性を評価できる見通しを得たため,さらに詳細に印加パターンを変化させて,より多くの固体を用いて実験を行う.具体的には,ツール高速化によって可能となった,インパルス上の印加に対しての凝集反応の評価を目指す.同時に,評価軸を拡張するための取り組みとしてインピーダンス特性(剛性・粘性)パラメータの推定についても検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
主に,これまでの成果について国際会議(2回)及び国内会議(2回)の発表のための支出を計画している.国際会議や英文論文誌に投稿するための英文校閲費も計上する.また,マイクロツールやマイクロチップを作成するための消耗品類(ウェハ・フォトマスクなど)購入のためにも研究費を使用する予定である.
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