研究課題/領域番号 |
24760205
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野川 晃佑 名古屋大学, 高等研究院, 特任助教 (30608881)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノメカトロニクス |
研究概要 |
本研究課題では,細菌駆動マイクロロボットをDDS等に実際に応用する際に課題となると考えられる操作手法に関して,オペレータがたった一つのガイドロボットを操作するだけで複数の細菌駆動マイクロロボットを任意に操作することが出来る手法を,血管を模したマイクロ流路内などで実現することを目的とする. 今年度は,本研究課題における提案手法で操作される対象である細菌駆動マイクロロボットについて,運動を定量的に解析し,数・位置を制御して組立てた場合は菌本来の動きの特性を直接的に反映しているが,ランダムな数・位置に細菌を組み立てた場合にはそうでないことを明らかにした.この成果は,提案手法による操作を実現するには,細菌の組立て数・位置を制御した上で,大量に細菌駆動マイクロロボットを作製する必要があるという,次年度に向けての新たな課題を明らかにしたものである. また,研究を推進するなかで,本課題でアクチュエータとして使用している細菌べん毛モータの特性についてより深く知る必要があると感じたため,平成24年度JSPS組織的な若手研究者等海外派遣プログラムにより,オックスフォード大学 Richard Berry講師のグループに留学して「単一細胞解析による細菌べん毛モータのトルク‐スピード解析」に関する研究を行った.本プログラムにおいては,べん毛への磁気ビーズ付着法確立,磁気ビーズの磁化容易軸の配向による印加トルクの最大化,外部磁場による操作と回転速度計測の両立の確認,という成果が得られた.本プログラムにより,べん毛モータに対するより深い理解,解析手法の実践的ノウハウを得られたことは,今後の本課題の推進に大きく寄与すると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度JSPS組織的な若手研究者等海外派遣プログラム「高機能・新機能を備えた物質・プロセス・システムの創製」により,2012年9月1日から2013年2月27日(28日帰国)までの6カ月間,Department of Physics, University of Oxford, United KingdomのRichard Berry講師のグループに滞在して,「Bacterial Flagellar Motors as Actuator」と題して,細菌べん毛モータのアクチュエータとしての特性解析に関する研究調査を行ったため. 当該派遣は,本課題でもアクチュエータとして使用している細菌べん毛モータの特性解析を目的としている.べん毛モータの特性解析手法を学んだこと,べん毛モータに対する理解をより深めたことなどにより,アクチュエータの特性やべん毛モータの回転原理解明などに繋がり,新たな制御手法の創出等,今後本課題の推進に大きく利するものとなると考えられる.しかし,実験装置等の関係で困難であったため,当初予定していた計画の遂行という観点ではやや遅れており,それに伴い予算の執行も次年度へ持ち越す部分が出た.
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今後の研究の推進方策 |
本課題の目的である“単一ガイドロボットによる複数細菌駆動マイクロロボットの自律的操作”の血管を模したマイクロ流路内における実現に向けて,下記の課題を順次解決していく. 1.ガイドロボットの作製:化学物質の保持性,化学物質の透過性を有し,磁性体の併用により磁場による遠隔操作が可能であるPEGなどの材料を用いたフォトリソグラフィ技術を応用して,ガイドロボットの作製を行う.また,形状・材料を遠隔操作という目的に対して最適化すること,複合材料やケージド化合物などを用いて誘引物質を放出する速度およびタイミングを制御可能にすることなどにより,ガイドロボットの高機能化を目指す. 2.細菌駆動マイクロロボットの最適化・作製効率向上:フォトリソグラフィ技術によるマイクロロボットの形状の最適化,材料選定・複合材料の使用などによる特性の設計,および自己組織的手法を用いた組立てという工学的アプローチと,サーマルサイクラー等の装置を使用した遺伝子操作によって,細菌の望みの部分をマイクロロボットと付着しやすいように改変する等の生物学的アプローチの両面から,細菌駆動マイクロロボットの最適化・作製効率の向上を目指す. 3.人工的な環境内での提案手法の実証:細菌駆動マイクロロボット・ガイドロボットの作製が終了した後に,血管を模した複雑形状のマイクロ流路を有するマイクロ流体チップなどの中で提案操作手法を実証する.血管を模した複雑形状のマイクロ流路を有するマイクロチップと血液を模擬した粘性を持つ流体を使用して,流れの無い状態での操作,数十 μm/sの流速を持った(毛細血管内と同様の)状態での操作,数十 cm/sの流速を持った状態での操作,と段階的に提案手法の実現を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度JSPS組織的な若手研究者等海外派遣プログラム「高機能・新機能を備えた物質・プロセス・システムの創製」により,2012年9月1日から2013年2月27日(28日帰国)までの6カ月間に渡り海外に滞在したため,当初の予定通りの予算執行が難しく次年度へ持ち越す部分が出た. 今後は,今年度の研究成果と新たに明らかとなった課題,上記プログラムにより得られた成果・知見を基に,研究の推進を加速させ,今年度執行出来なかった部分と次年度の執行予定部分を併せて,本研究課題終了までの研究費の使用計画通りに執行する方針である.
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