研究課題/領域番号 |
24760210
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
舘山 武史 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (70336527)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スケジューリング / on the job training / 機械学習 / 強化学習 / 遺伝アルゴリズム / 保守作業 / 技能教育 / 大規模システム |
研究概要 |
本研究の目標は,大型機械のメンテナンス現場において,技能教育と作業効率のバランスを状況の変化に応じて調整し,また柔軟・迅速なスケジュール変更を可能とするスケジューリング支援システムを開発することである. 初年度は,上記システムの要素技術となる,1.大型機械のメンテナンス作業の問題定式化,2.その問題を離散・連続混合システムとしてモデリングし,シミュレーションを行うためのシステムの開発,3.機械学習を用いた技能教育と作業効率の動的バランス調整システムの開発を目指し,下記の研究を行った. まず,大型機械のメンテナンス現場の問題を定式化し,モデル化を行った.本定式化は,本研究で開発するシステムの基盤となるものであり,必要不可欠なものである. 次に,上記の定式化に基づき,テキストベースのシミュレーションシステムを開発した.また,本研究で提案する「教育値」という技能教育と作業効率のバランスを調整するパラメータに基づいてスケジューリングを行うアルゴリズムを,上記のシステムに適用した.本システムは,最終的に構築する離散・連続混合システムのシミュレーションの土台となるものであり,下記の機械学習を用いたスケジューリング手法の開発・検証に必要となるものである. そして,GAと強化学習を用いた,「教育値」を現場の状況に応じて調整するアルゴリズムを開発し,検証を行った.これにより,作業進行中の納期の変更(延長・短縮)に応じて最大限の教育効果が得られるスケジューリングを可能とした. また,大規模施設等の作業現場を離散・連続混合システムとしてモデル化し,シミュレーションを行うシステムを構築するための第一歩として,「場面遷移ネット」の拡張を行った.これにより,従来の場面遷移ネットではモデリングが困難であった並列的・階層的なシステム構造が容易にモデリング可能となり,複雑・大規模な作業現場のモデリングを可能とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず,大型機械のメンテナンス現場の問題定式化は,これまでの成果をベースに改良を行うことで,ほぼ予定通り完了することができた. また,平成25年度に開発する予定であった,機械学習を用いた技能教育と作業効率のバランスの動的調整システムの開発は,当初の計画よりもより多くの時間を要すると判断し,平成24年度から開発を開始することとした.そのために,まず最終的に構築する離散・連続混合システムのシミュレーションシステムの基礎となる,テキストベースの簡易的なシミュレーションシステムを構築し,機械学習を用いたシステムの開発および検証を行った.これにより,平成25年度で本システムを開発完了とするための土台を築くことができた. 本研究で最終的に構築する,場面遷移ネットを用いた離散・連続システムのシミュレーションシステムの構築は,まず平成24年度は,場面遷移ネットによってより複雑・大規模なシステムをモデリング可能とするために,場面遷移ネットの拡張を行った.これにより,従来の場面遷移ネットではモデリングが困難であった並列的・階層的なシステム構造が容易にモデリング可能となったが,当初平成24年度中に開発予定であった,「場面遷移ネットを用いた大型機械のメンテナンス現場のモデリングとシミュレーション手法の開発」は,平成25年度も継続して行うこととなった.これは,前述の機械学習を用いた技能教育と作業効率のバランスの動的調整システムの開発を,当初の計画から前倒しで開始したことが主な理由であり,本システムの構築を,平成25年度は迅速に進めていく必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,まず前年度から継続して「場面遷移ネットを用いた大型機械のメンテナンス現場のモデリングとシミュレーション手法」の開発を行う.また,前年度に土台を築いた「機械学習を用いた技能教育と作業効率のバランスの動的調整システム」は,現段階では,対応可能な現場の状況変動の要素が限られている(納期の延長・短縮のみ)ため,より多くの要素に対応可能とするためにさらなるアルゴリズムの改良を進めていく. また,前述の機械学習システムを用いて,様々な状況を想定してシミュレーションを行い,現場の状況と適切な教育値の組を「ルール」として多数取得し,データベースを構築する.これにより,状況が突然変動し,スケジュールの変更を余儀なくされた場合でも,本データベースに蓄積されているルールを参照することで,柔軟・迅速にスケジュールの変更を行うことが可能となる. そして,本研究で開発したシステムによって導出された結果と,実際の現場のスケジュール実行結果との比較を,現場管理者に対してヒアリングを実施する等によって行い,提案手法の評価を行う.そして,本研究の成果をまとめ,国内・国外の会議にて本研究の成果を発表し,また日本機械学会論文集などに論文を投稿する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の予算のうち,177,664円が次年度繰越となった.この理由について,下記に記す.「研究実績の概要」と「現在までの達成度」で述べたように,平成25年度から開発予定であった「機械学習を用いた技能教育と作業効率のバランスの動的調整システム」の開発を,前倒しで平成24年度から開始した.そのため,平成24年度に開発予定であった「場面遷移ネットを用いた大型機械のメンテナンス現場のモデリングとシミュレーション手法」は年度終了時点で開発途中となり,平成25年度も継続して行うこととなった.本シミュレーションシステムの開発には,プログラム最適化ソフトウェア等の開発ソフトウェアが必要であり,平成24年度に購入予定であったが,場面遷移ネットシミュレーションの仕様の詳細を平成25年度中に決定した段階で,配分された予算の額も考慮に入れた上であらためて選定・購入することとしたため,上記の繰越が発生した.
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