本研究の目標は、大型機械のメンテナンス現場などの大規模作業現場において、作業者の技能教育と作業効率のバランスを考慮した長期的なスケジューリングを行い、かつ柔軟・迅速なスケジュール変更を可能とする支援システムを開発することである。最終年度は、前年度の成果をもとに、大規模作業現場のモデル構築手法とスケジューリングアルゴリズムの改良を試みた。 まず、離散・連続混合システムのモデリング・シミュレーション手法である場面遷移ネットを用いて大規模作業現場のモデリングを行う手法を提案した。ここでは、作業者の作業の遷移を離散事象システムとして、作業者の習熟・忘却の仕組みを連続システムとして作業現場の簡易的なモデリングを行い、動作確認を行った。本成果は、複雑・大規模なシステムの動作をシミュレーションにより検証するための一手法として重要な成果であると考える。 また前年度は、本問題を作業効率と教育効果に関する評価値それぞれに重み付けを行い、それらの和を最大化する多目的最適化問題として定義し、機械学習によって問題を解くシステムを構築したが、各評価値の重みの設定が困難という問題があった。そこで今年度は、まず目標とする作業終了時間を入力し、その値に応じて最大限の教育効果が得られるよう、スケジュールの評価基準と、構成する状態空間等の学習システムの見直しを行った。これらの改良により、技能習得者数を一定数確保しつつ、設定した納期に間に合うように最大限の教育効果が得られるようなスケジューリングが可能となった。本システムによって様々な状況下でのスケジューリングルールを学習・保存しておくことにより、現場の状況変動への迅速な対応が可能となる。 本研究成果は、作業者の能力・教育計画、納期、作業者の流動化等、様々な要素を全て把握して行う必要があった大規模作業現場のスケジューリングの困難さを解消する手法として意義深いと考える。
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