研究課題/領域番号 |
24760216
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
西岡 靖貴 立命館大学, 理工学部, 助手 (70609734)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ソフトメカニクス |
研究概要 |
本年度において①折紙幾何学と熱溶着を用いた「極低質量化」を実現する設計理論の確立、及び②様々な動作を実現する数種類のアクチュエータの設計を計画していた。 極低質量化を実現するために、プリーツと呼ばれる折り込み構造を有するアクチュエータの形状設計手法をモデル化及び実験的検討により導出した。プリーツは単純な折り込み構造であるが、その折り込み量や折り込みピッチを変化させることで容易にアクチュエータ形状が幾何学的に設計できることを示した。本実績に関連して、国内学会3件、国際学会1件を発表済み(連名含む)であり、現在投稿論文への準備を進めている。また、国内学会1件を予定している。 本プリーツ構造に焦点を当て、複数のタイプを試作した。上記の実験的検討では、ピッチを変化させたものだけでなく、細型のものも試作している。また、斜め折りを行うことによる螺旋運動の実現、2つのアクチュエータの拮抗駆動による連続的な位置決め、及び他自由度ハンドへの応用検証などについても実施した。後者の拮抗駆動に関しては国内学会にて1件発表済であり、国際学会1件が査読中である。 また、折紙幾何学を用いていないものの、同じ材料・手法による袋構造アクチュエータも試作しており、ロボットアームへ応用を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元的な幾何形状であるが、本年度目標としていた設計手法については導出した。容易にアクチュエータの柔軟な屈曲形状が設計できることは、大きな成果であると考えられる。また、次年度前半における特性評価に関しては、プリーツ構造を持つ指の様な形状の1種類に焦点を当て、一部実施済みである。さらに、次年度後半における他自由度ソフトメカトロニクスへの応用に関しても、ハンドとしての1例を試作済みであることなどが理由として挙げられる。 一方で、制作手法に関して熱溶着手法・材料の選定に不十分な点がある。熱溶着機はインパルス式を使用しているが、折り込み部より内圧が40kPa程度以上になると漏れの発生が確認されている。これは溶着機械だけでなく、材料のヒートシール性も関わってくると考えられる。耐圧性が高くなれば発生力の向上も見込めるといった課題が残っている。 以上のことから、一部計画より早く進んでいるが、新たな課題も確認された。本課題に関しては当初の計画における「不測時の対応」欄で記載していたが、メーカ調査の段階で次年度へ持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり本年度、一部来年度の計画について検討・実施済であるが、より詳細な検討は必要である。特に発生力に関してはモデル化及び、測定についても不十分である。分布圧センサを利用し、本アクチュエータの力を計測する。計測した実験結果とモデリングにより、力の発生メカニズムについても明らかにする。 また、確立した設計手法を用いた多自由度ソフトメカトロニクスとしてロボットアームやロボットハンドなどについて検討する。 これらと並行して耐圧性の向上に関しては、申請書に記載の通り、高分子材料メーカ関連と適宜技術相談や製作委託を実施する。また、本年度ではプリーツ構造を持つアクチュエータに焦点を当てていたが、進捗度合によっては他の折り込み方法を持つアクチュエータに関しても検討を進める。 以上より、次年度に関して、①制作手法の改善による耐圧性の向上、②発生力のモデル化、③多自由度ソフトメカトロニクスの例示といった項目を進める。本申請課題の段階では特に②を重点的に進める。その後、③についてもアプリケーション例として示す。①は②及び③と並行して進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度における未使用額が\10,000程度生じており、次年度においては本未使用額を合わせた研究費を使用する。 より溶着性の高い高分子材料及び、溶着機器が必要である。ただし、メーカと技術相談の結果次第では製作委託をする。その際には試作委託費が必要となる。力のモデル化のための、分散的な発生力を計測するための分布圧センサが必要である。当初は予定していなかったが、設計手法が本課題の主となる部分であり必要と判断する。予算としてはゴム材料、型成形材料、カメラに計上していた予算を一部代用する。本年度において本アクチュエータを利用したソフトメカトロニクスは、軽量な高分子材料が適当と判断したためである。また、低圧域で制御するための、精密電空レギュレータが必要である。 国内学会3件、国際学会1件など、研究発表・情報収集のための旅費(申請者、研究協力者)が必要である。また、本成果を論文に投稿するための費用が必要である。
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