研究課題/領域番号 |
24760217
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
鄭 聖熹 大阪電気通信大学, 工学部, 准教授 (50422176)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | safety contact sensor / flexible sensor / ultrasonic wave |
研究概要 |
本申請研究は、粘弾性チューブ内を伝播する超音波エネルギー情報を利用した「安全確認型フェールセーフ広範囲接触センサシステム」の開発が目的である。 本年度は、粘弾性チューブ内伝搬における超音波の伝搬速度、減衰特性を明らかにするための実験を実施した。 実験では、まず、超音波(40[kHz])が異なる硬さのチューブ内を伝搬する際の速度及び減衰特性を調べた。チューブは,超音波送信器のスピーカと同一径の内径10[mm]のシリコンゴム製であり、硬度は60である。チューブの硬さは厚さが2[mm]、3[mm]、4[mm]のチューブを用いることで対応した。また、各厚さのチューブに対して1.5[m],2[m],2.5[m]の3種類の異なる長さを用意し、超音波の伝搬時間及びピーク電圧の変化を測定した。実験結果、各チューブの厚さ(硬さ)による伝搬速度変化に有意味な差は確認できなかった。これは、3種類のシリコンチューブ硬さの差が超音波の伝搬速度に影響を及ぼす程の大きくないことを意味し、同材質のチューブを用いる場合は、伝搬速度を特に考慮する必要がないことが言える。次に、チューブ硬さによる超音波の音圧減衰特性の差を調べた。その結果、伝搬速度と同様、チューブ硬さによる減衰率の大きな差はなく、 減衰係数αは-1.4で自由音場での減衰係数より小さいことが確認できた。これは、チューブ内の超音波が平面波として伝搬することを意味する。 次に、チューブの曲率による伝搬速度及び減衰率の変化を調べる実験を実施した。曲げ半径50、75、100[mm]の場合について実施した結果、チューブ曲げ半径が小さい(曲率が大きい)程伝搬速度の遅延、減衰率の増加が観測された。特に、減衰率はセンサの接触を判断する閾値を決める際に重要なパラメータであり、曲率による減衰率の変化量を実験的に求めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究の目的は、粘弾性チューブ内を伝播する超音波エネルギー情報を用いて広範囲接触検知が「安全確認型」で実現できる、「フェールセーフな広範囲接触検知センサシステム」を開発することである。 上記目的を達成するために、本年度は、超音波信号の粘弾性チューブ内伝播特性を調べる基礎実験を実施した。研究計画において予定していた実験は、①異なる粘弾性チューブにおける特性、②チューブの曲率による特性の変化、③異なる径を持つチューブにおける特性であり、その内①、②の実験を完了した。同実験結果を基に、申請期間2年目における研究を実施することが可能である。実験③は、実験②の測定に予想以上に時間がかかり開始が遅れているが、実験①から十分結果が予想可能であるため、申請期間2年目における研究計画の開始及び遂行には特に大きな支障はないと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、前年度の未実施分の実験③を実施すると同時に、チューブ変形による超音波エネルギーの損失特性を理論的に明らかにし、安全確認型フェールセーフインターロック回路を試験的に製作,効用性を確認する。 まず、チューブ変形-超音波信号エネルギー損失特性関係の定式化を行う。チューブ内を伝播する超音波信号は、外部環境との接触によりチューブが変形されると、一部のエネルギーが変形部位で反射により損失される。ここでは、まず、対象物の形状を半球状のものと仮定し、対象物の押込み量とチューブの変形表面積との理論的関係を導出する。その後、超音波を体積を持つエネルギー波として捉え、変形表面の断面によりブロックされるエネルギー波の体積からエネルギー損失量を理論的に求め、実験により妥当性を検証する。 次に、安全確認型フェールセーフインタロック試験回路の構築及び有効性確認実験を実施する。試作回路は、送信側に安全診断信号生成部と超音波送信回路、受信側に受信回路と安全診断信号処理部で構成し、安全診断信号処理部の出力信号がインターロック回路のインターロック信号として入力する。安全診断信号生成部は一定サイクルで超音波信号を生成し、安全診断信号処理部では、受信回路から受け取った超音波エネルギーをウィンドウコンパレータで閾値と比較してインターロック信号を生成する。 5[m]長程度の粘弾性チューブの両端に超音波送受信器を取り付けた接触センサを製作し、直径50[mm]程度の円筒型リンクを有する1リンクマニピュレータに巻きつけ、センサシステムの検証実験を実施する。実験においては、電気・電子部品における主な故障モードである各信号線の断線、短絡、超音波センサ本体の故障、チューブの切断等の故障モード及び対象物との接触発生時において安全信号遮断でマニピュレータが正常に停止することを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度未実施分の次年度使用額(306,917)は、未実施実験③(異なる径を持つチューブにおける特性試験)とために、チューブの購入等に使用する。また、前年度未実施の成果報告のための参加費、旅費として使用する予定である。
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