現在のヒューマノイドロボットの大半は足踏みを繰り返して移動しているが,短距離移動では安定性やエネルギー効率に難があり,狭領域や劣姿勢移動は困難である.このような状況での移動方法の一つとして,摺足運動による移動が提案されている.摺足移動は脚の上下動なく両足が常に地面に接地しているため安定した移動が可能である.我々はこれまでに摺足による様々な移動を実現してきたが,これらの動作は実験的に得られたもので根拠が薄かった.また定点での方向転換や短距離の並進移動で,長距離移動は実現できていなかった. そこで平成24年度は,ヒトの脚の主要な筋に筋電位計を取り付け,摺足による定点方向転換時の筋活動を計測した.その結果,回転初期の臀部筋活動と全期間の脛・脹脛で活発な筋活動が認められた.この結果を基にヒューマノイド動力学シミュレータを用いて検証した結果,実際にヒトが行った摺足と同様の回転,最終姿勢が得られ,摺足方向転換のヒップのピッチ軸回転の重要性が確認された.またこの制御方法の有効性が示唆された. 平成25年度は,摺足による長距離移動の実現を目標とした.これまでの我々の摺足研究では,足底角度を制御することで足裏の荷重分布と滑り領域を調節して摺足移動する方策であった.足裏荷重分布を適切に連続的に切り替えることで,真横方向への短距離移動が可能であることを確認していたが,目標位置・姿勢への移動は考慮されておらず,制御方策も未定であった.シミュレータ上で様々な条件を試行錯誤して実験した結果,摺足中の移動方向制御には胴体の前傾・後傾が有効であることが判明した.胴体角±5[deg]で20ステップ摺足移動させたところ,1[m]程度の並進移動と±90[deg]程度の方向転換が発生した.これを応用して,与えた目標位置・姿勢と現在位置・姿勢を比較して胴体角にフィードバック制御することで,目標位置・姿勢に到達できた.
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