研究課題/領域番号 |
24760221
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研究機関 | 阿南工業高等専門学校 |
研究代表者 |
川畑 成之 阿南工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70390507)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | テンセグリティ / 展開構造 |
研究概要 |
近年地球上のさまざまな地域で大規模な自然災害による被害が増加しており,日本もその例外ではない。災害発生後には迅速な救助活動とともに十分な被災者支援が求められ,その際必要なものの一つに仮設住宅などの構造物が含まれる。従来の仮設構造は災害直後であればテント形式,復興段階ではプレハブ形式のものがほとんどであるが,それぞれ設置後の安定性・居住性や設置にかかる日数・コストに問題がある。そこで比強度・比剛性に優れ,容易に設置できる構造様式が求められている。 以上のような背景のもと,本研究ではテンセグリティ構造を利用した展開構造物の開発に取り組む。本構造様式は同程度の構造強度を有するトラス構造などと比較して,比強度・比剛性に優れた軽量構造物を構築できる。研究代表者はこれまでテンセグリティ構造に自動展開機構を組み込むことで容易な設置を実現する手法を提案してきたが,展開中および展開後の構造安定性や,運搬時に影響する収納率の観点から依然として課題が残されていた。そこで本課題では張力材と圧縮材双方の伸縮制御を同時に行うハイブリッド制御システムを構築し,より安定した展開動作と高い収納率の実現に取り組む。 24年度は基礎的なモデルを製作し,その有効性を検討することとした。実施計画では圧縮材,張力材の双方を自動制御するシステムを構築することとなっていたが,組立・設計方法に課題が生じた.そこでまずは張力調整機構を開発し,実験用構造モデルの製作を進めた。製作した構造モデルを用いた構造強度評価試験(片持ち曲げ試験)を実施し,張力調整機構を組み込んだ構造の安定性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は圧縮材および張力材を同時に制御するハイブリッド制御システムを備えたテンセグリティ構造を開発することによって,より軽量で比剛性に優れる展開構造物を実現する。また,その応用として災害被災者支援のための新たな仮設構造システムを実現することを目的としている。 取り組みの初年度である24年度にはこれまで申請者らが取り組んできた展開機構を備えたテンセグリティシステムを利用し,ハイブリッド制御システムの基礎的な実験モデルの製作に取り組むこととしていた。年度当初より新たな構造モデルの設計に取り組み,これまでにない圧縮材保持要素の開発などの成果を挙げていたが,構造の組立において全体強度の安定性や圧縮材長さの調整などいくつかの課題が生じた。そこでまずは圧縮材を長さ固定要素とした張力材張力のみを制御する構造を製作し,構造の安定性を確保したうえで部材制御をした際の構造安定性について評価することとした。その結果張力材張力を任意のタイミングで制御可能としたことで荷重条件の変化に対する構造強度の安定性が向上し,本システムの基本的な有効性が明らかとなった。 しかしながら当初予定のハイブリッド制御システムの完成には至っておらず,現在開発を継続中であることから本研究の達成度はおおむね順調であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現在継続して取り組んでいるハイブリッド制御システムを備えたテンセグリティモデルの完成に向けた活動を進める。構造モデル完成後に構造強度評価試験ならびに展開実験を実施し,本システムの有効性を明らかにする。 基礎的な構造評価試験を実施後,ハイブリッド制御システムの利点を活用した被災者支援用仮設構造システムの開発を進める。研究計画書に示した通り,高収納率・軽量・簡単展開といった特徴を備えた構造システムを実現するべく,基本的なモジュールを持つ実験用小型モデルならびに人が利用することを想定した実物大モデル製作に取り組み,本システムの有効性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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