近年,様々な地域で大規模な地震,台風等による甚大な被害が生じている.そのような環境の中,災害発生後の迅速な救助活動と共に,被害者のニーズに沿った十分な被災者支援活動が求められており,たとえば速やかな仮設住宅の設置などが含まれる.現在,仮設構造として,テント様式の構造やプレハブ様式の構造が多く採用されている.しかしそれらの構造は設置後の安定性,居住性,設置にかかるコストに問題がある. 本研究で採用するテンセグリティ構造は,圧縮力を受け持つ剛体棒と張力を受け持つワイヤーから構成され,トラス構造などと比較して比強度に優れる特徴を有する.しかしながら本構造様式は組立法の困難さなどからほとんど実用化されていない.研究代表者はこれまでテンセグリティ構造に展開機構を組み込むことで容易な設置を実現する方法を提案してきたが,展開中の構造安定性や,構造全体の強度特性評価に依然として課題が残されていた.そこで本課題では張力材と圧縮材の伸縮制御を同時に行うハイブリッド展開構造システムを開発し,より安定した展開動作の実現を目指すこととした. 24年度までに張力調整機構を組み込んだ構造強度評価試験モデルを開発し,基礎的な強度試験を実施した.25年度は試験モデルを用いた張力制御実験を引き続き実施するのに並行して,圧縮材にも伸縮機構を組み込んだハイブリッドテンセグリティ構造を開発し,自動展開時の安定性向上にも取り組むこととした. 張力制御実験では,複数の張力材張力を制御し,それぞれの張力と構造強度の関係を明らかにした.その結果,片持ち構造の曲げ強度を張力制御によって変化させることができ,圧縮材に作用する圧縮力も均一化できることが明らかとなった.また,ハイブリッドテンセグリティ構造による展開実験では,圧縮材長さと張力材長さの同時制御を試み,従来の一方だけ制御していた展開構造と比較して安定した展開動作を実現した.
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