研究課題/領域番号 |
24760225
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤野 貴康 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80375427)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ガス遮断器 / 電磁流体解析 / アーク |
研究概要 |
本研究課題では,電磁流体解析から,CO2ガス遮断器の遮断性能の向上に磁気ロータリー効果が実質的に有効に働くか否かを見極める事を目的としている.この目的のために,当初の計画通り,まず,CO2ガス遮断器環境下で磁気ロータリー効果を扱える3次元非定常電磁流体解析プログラムを開発した.このプログラムでは,遮断器内部の複雑な流路形状と遮断過程時の電極移動,CO2/SF6の熱化学係数(エンタルピーなど)・輸送係数(熱伝導率・電気伝導率・粘性係数)・輻射損失の温度・圧力依存性,ローレンツ力,ジュール熱,誘導起電力,誘導磁界などの磁気ロータリーガス遮断器の解析で取り扱うべき物理現象を考慮した.次に,莫大な計算負荷に対応できるPCクラスター並列計算機(30CPU並列計算機)を構築し,交流遮断過程(50Hz交流電流の1周期相当)の非定常解析を2ヶ月程度で終了できる計算機環境を用意できた. 上記の解析プログラム・並列計算機を用いて,実際のモデルガス遮断器環境下で,ある一つの磁場条件下ではあるが,CO2ガス及び比較検討用のSF6ガス環境下で交流遮断過程時の3次元非定常電磁流体解析を実施し,その解析結果から,SF6ガス環境下と同様にCO2ガス遮断器環境下でも磁気ロータリー効果に伴うアークコンダクタンスの低下を確認できた.また興味深い物理現象として,SF6環境下では磁気ロータリ効果でアークが螺旋形状を示すが,CO2環境下ではローレンツ力によりアークは回転するものの,アーク形状は通常のガス遮断器と同様に円筒形を維持することが解析結果から分かった.その理由については,現在考察中である.なお,これらの結果は,平成25年3月に行われた電気学会全国大会にて発表した. 以上述べた研究成果は,当初の研究目的・計画を満足するものになっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では,電磁流体解析から,CO2ガス遮断器の遮断性能の向上に磁気ロータリー効果が実質的に有効に働くか否かを見極める事を目的としており,その目的を達成するために,以下の研究計画を交付申請書に記載した. (1)CO2ガス遮断器環境下で磁気ロータリー効果を扱える3次元電磁流体解析プログラムの開発,(2)莫大な計算負荷に対応できるPCクラスター並列計算機の構築,(3)モデルCO2ガス遮断器環境下で,印加磁界分布を解析パラメータとし,遮断過程時の3次元電磁流体解析を実施する.比較検討用に,SF6ガスの場合,また磁界を印加しない場合の解析も行う.解析結果から,遮断性能の向上に対して磁気ロータリー効果が有効に働くか否かの結論を示すとともに,最適な印加磁界分布についても明らかにする. これらの計画のうち,(1)(2)は平成24年度中の完了を計画し,(3)については平成24年度から平成25年度10月頃までに完了する計画を立てたが,その通りに順調に研究が遂行できている.なお,(3)については,現段階で,ある一つの磁場条件下ではあるが,CO2ガス環境下での解析に加え,SF6環境下での解析も終了し,その比較検討も今年度の電気学会全国大会で発表することができた.また,関連研究として,CO2/SF6の混合ガスを想定したガス遮断器環境下での解析準備も進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は,当初の予定通り,前年度からの継続として,以下の計画のもと研究を進める. ・モデルCO2ガス遮断器環境下で,印加磁界分布を解析パラメータとし,遮断過程時の3次元電磁流体解析を実施する.比較検討用に,SF6ガスの場合,また磁界を印加しない場合の解析も行う.解析結果から,遮断性能の向上に対して磁気ロータリー効果が有効に働くか否かの結論を示すとともに,最適な印加磁界分布についても明らかにする. なお,ここで実施する解析はH25年度の10月頃までに終了を予定しており,その後は,H24年度の研究成果とH25年度の研究成果を原著論文としてまとめることを計画している.また,得られた研究成果を基に,次の研究課題について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の研究費は,主として研究成果の発表に関わる旅費及び論文公表に伴う掲載料などに充てる予定である.また,非定常3次元解析を実施しているため保存すべきデータ量が莫大なため,その保存媒体の整備も極めて重要で有り,そのための大容量記憶媒体の整備などにも研究費を一部利用する.
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