研究課題
本研究は、高構造物からの上向き雷の放電様相を調べることを目的として行われた。上向き雷の被害は、すでに日本海沿岸の風力発電用風車で冬季に大きな問題になっているが、風力発電設備の大型化に伴い、今後は太平洋沿岸でも被害が発生する可能性がある。落雷のパラメータは、主に緯度によって異なることが明らかになっており、日本国内の雷対策には、日本での観測が欠かせない。上記の目的のために、本研究では、高速度カメラを用いた東京スカイツリーからの上向き雷の観測を平成24年度から開始した。東京スカイツリーのような、高さが数百m以上の超高構造物では、太平洋沿岸地域の平地に建てられても上向き雷が発生するようになり、多くの雷撃を受ける。高速度カメラを用いた雷放電観測システムは平成24年8月に設置し調整を終えた。カメラ設置後、平成25年12月までには同時に観測を行っている電流観測で17件の雷放電に伴う電流が観測された。この内、高速度カメラでは11例の雷放電が観測されており、11例中10例は下向き落雷の落雷様相であった。この研究の目的として、上向き雷を想定したのは、海外の観測では下向き雷の着雷様相と電流の同時観測データはほとんど観測されていなかったためであるが、耐雷設計の基礎データとしては、下向き雷の方が大幅に重要である。今後観測を継続することにより、当初予定していた上向き雷のデータも蓄積されることは間違いなく、それに加えて、もっとも重要である下向き落雷のデータも観測できているため、この研究は当初想定していた以上の望外の成功を収めたと結論づけられる。
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電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌)
巻: Vol.134, No.1 ページ: 84-85
10.1541/ieejpes.134.84