研究課題/領域番号 |
24760228
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小島 寛樹 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (00377772)
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キーワード | 電気機器工学 / 超伝導電力応用 / 超伝導ケーブル / 限流器 / 限流協調 |
研究概要 |
限流・復帰機能を有する超伝導限流ケーブル(SFCLC)の基盤技術を確立するため、本申請課題では、1.限流・復帰機能の両立可能範囲の定量化、2.長尺化に伴う温度・線材特性の分布による限流・復帰特性への影響評価、3.限流機能の協調を考慮した電力システムにおける最適な適用方法の検討の3項目について明らかにする。平成25年度では、上記のうち2及び3について検討を行った。 研究項目2:平成24年度に構築した1次元に拡張したシミュレーションモデルにより、運転温度及びその分布を変化させた際の限流特性に及ぼす影響について検討した。超伝導ケーブルの冷却は、一般に液体N2を循環させることにより行われ、熱の漏れや超伝導ケーブルの交流損失によって、循環する液体N2の温度が上昇し、超伝導ケーブルは長さ方向に温度の分布を持つことになる。超伝導線材の抵抗発生特性は温度の影響を受けるため、ケーブルの温度分布も線材特性の分布と同様にSFCLCの限流・復帰特性に影響を与えることが予測される。温度分布を考慮した限流シミュレーションにより運転時の温度が高い領域に発熱が集中し、著しい温度上昇を引き起こす可能性があることが明らかとなった。これを抑制するためには、臨界電流、運転領域付近のn値を小さくし、温度勾配を緩やかにし、全体的に運転温度を上昇させることが有効であることを明らかにした。 研究項目3:現在の電力システムは複雑なネットワークを構成している。そのため、実際の電力システムにSFCLCを導入する際には、並列ルートに故障電流が回り込むことがあるなど、互いの限流動作への影響が考えられ、各SFCLC間の限流協調が重要となる。平成25年度には、2つのSFCLCが並列に導入された系統を想定し、故障点による限流動作の違いを検討し、SFCLCはそれぞれ単独で導入された場合とほぼ同じ限流動作をすることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請課題では、1.限流・復帰機能の両立可能範囲の定量化、2.長尺化に伴う温度・線材特性の分布による限流・復帰特性への影響評価、3.限流機能の協調を考慮した電力システムにおける最適な適用方法の検討の3項目について明らかにすることを目的とする。 このうち研究項目1及び2については、おおむね順調に進展し、研究項目2については、当初予定していた以上のパラメータを検討項目に加え、当初計画以上に進展した。 一方で、研究項目3については、平成25年度に2つのSFCLCが並列に導入された系統について検討をし、SFCLCの相互の限流動作の影響を検討したが、実際の電力システムに近い複雑な系統における限流協調についての検討は十分ではない。
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今後の研究の推進方策 |
複数のSFCLCが導入された系統モデルにおける計算において、当初の想定よりも多くの計算量が必要であることが分かってきたため、計算機のハードウェア及びソフトウェアの増強を行う。その上で、平成25年度に実施した2つのSFCLCが並列に導入された系統での計算と同様な手法で、より複雑な、かつ多数のSFCLCが導入された系統での限流動作の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
シミュレーションの基礎データとして、超伝導線材の電圧-電流-温度特性を複数回取得したが、当初予測よりも少ないサンプル数で十分なデータの取得が出来たため、超伝導線材購入予算に未使用額が発生した。 計算機シミュレーションにおいて、当初の予測より高度な解析が必要なことが分かってきたため、次年度使用額は主として計算機能力の増強に使用する。また、次年度使用額の一部は、計算シミュレーションの結果の実験による検証に充てることを予定している。
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