現在,太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギーの電力網への導入が進んでおり,コンパクトかつ高信頼な電力機器の実現のためには,電界分布の最適化を容易にする低誘電率な電気絶縁材料がますます重要になっている.本研究では,電力機器にナノポーラスコンポジット絶縁材料を適用することを目指し,その低誘電メカニズムと電気絶縁特性を,誘電スペクトルと絶縁破壊強度を測定することから解明することに取り組んでいる まず,電力機器で多用されるアルミナ材料を用いたメソポーラスアルミナ粒子を,エポキシ樹脂に充填したナノポーラスコンポジットを作製した.その結果,メソポーラスアルミナ粒子はエポキシ樹脂に充填された状態でも,比誘電率が小さい空孔を27~34vol%内在していることがわかった. 次に,ナノポーラスコンポジットのインピーダンスを,改良した浮遊容量低減電極を用いて測定することにより,誘電特性を調査した.その結果,ナノポーラスコンポジットの比誘電率測定値は,従来材料であるノンポーラスコンポジットの比誘電率より低いことが明らかになった. さらに,ナノポーラスコンポジットの耐電圧特性を,構築したMcKeown電極系を用いて測定した.その結果,ナノポーラスコンポジットの基礎的な耐電圧特性である直流絶縁破壊の強さは,ノンポーラスコンポジットの破壊の強さと同等であることが明らかになった.このことから,ナノポーラスコンポジット内部の空孔は直流絶縁破壊の強さの欠陥とならない可能性を示す事ができた.また,水分の影響を調べる予備検討として,ナノサイズ粒子構造が水分を介する電気的劣化(水トリー)に与える影響を調査した.その結果,ナノサイズ粒子構造の導入により水トリー進展が抑えられることを明らかにした. 以上より,ナノポーラスコンポジット絶縁材料が,電力機器の有力な電気絶縁材料の一つであることを実験的に示すことができた.
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