研究課題/領域番号 |
24760230
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新口 昇 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60614039)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 風力発電機 / 磁気ギアード発電機 |
研究概要 |
計画では,動作原理の検証と数値シミュレーションによる最適設計を今年度に行う予定であった.まず,動作原理の検証においては,風力発電機に適した構造として,永久磁石を高速ロータだけでなく,ステータの内径のスロット部のみに入れる構造を世界で初めて提案し,理論式により動作原理を確立した.また,数値シミュレーションにより,これまで提案されている磁気ギアードモータ(発電機)の中で,最大伝達トルクだけでなく通電トルクも高く,最もバランスが取れていることを明らかにした.この構造により,原理検証段階ではあるが,2MWクラスのダイレクトドライブ方式の風力発電機に新構造の磁気ギアード発電機を適用することで,従来機の60%程度の重量で実現できることが判明した. しかし,磁気ギアード発電機自体,従来機に比べて鉄損が大きく,これは新構造の磁気ギアードモータにおいても同様であることが判明した.特に,高速ロータおよび低速ロータの永久磁石での渦電流損失が実用上の問題になることが明らかになった.そこで,渦電流損失低減手法として,永久磁石の軸方向分割や,埋め込み磁石構造の採用を検証し,有限要素解析により有効性を明らかにした.また,同時に,ステータ側のスロット開口部に設けていた永久磁石の背面(外周側)にヨークを設け,ステータのスロットを2分割する構造を採用することで,永久磁石の磁束密度を上げ,最大伝達トルクを増加させることに成功した.これらの技術を組み込んだ磁気ギアード発電機は,最適設計が完了していないにもかかわらず,数値シミュレーション上では従来機に対して重量で60%軽量化できており,さらに97%という従来機と同等の発電効率を実現している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
磁気ギアードモータ(発電機)で世界初となる画期的な構造を開発し,これが従来の発電機,さらにこれまで提案されている磁気ギアードモータと比べ,非常に高い性能(最大伝達トルク,通電トルク)を有することがわかった.これにより,予定していた理論式の構築,数値シミュレーションによる検証,損失特性およびトルク特性のシミュレーションによる設計を完了させただけでなく,従来機との比較までも完了させたことがこの評価の理由である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,試作機による実験検証に向けた最適設計を継続する.ただし,大型機を試作することは研究室レベルでは困難なので,500Wクラスにスケールダウンして設計する.計画では,最適設計において,コギングトルクの低減技術の構築を予定していたが,新構造の磁気ギアード発電機は,特別な低減技術を採用しなくても低コギングトルクであるため,極数とスロット数の組み合わせのみで低コギングトルク特性を維持するようにする.また,振動特性については,従来モータと比較することで,振動レベルを把握することから始める. 設計した試作機の評価においては,発電機とPWMコンバータを組み合わせた評価ではなく,発電機をモータとして評価する.つまり,汎用のインバータでモータとして回転させ,速度制御により所定の回転速度で発電量および発電効率を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品と消耗品については,計画通り,振動特性の測定環境を構築するとともに,試作機を製作する. 旅費については,国内学会,海外学会の発表ともに,計画通りに実施する.
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