研究課題/領域番号 |
24760232
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三島 史人 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80558263)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 磁化率 / 溶存酸素 / パーフルオロカーボン / 磁気アルキメデス / 磁気力 |
研究概要 |
本研究の特色は、反磁性物質を磁気アルキメデス力(磁気力)を用いて、化学的な処理なしに分離可能とすることである。従来法では作業媒体に塩化物の常磁性溶液を用いていたため、分離対象物質や装置の腐食の問題があったが、溶存酸素パーフルオロカーボンを作業媒体に用いるため、その問題を解決可能である。本分離手法において作業媒体の磁化率は重要な項目となり、常磁性溶液を作業媒体として行なう場合、作業媒体の磁化率を制御するために溶液の濃度を調整する必要があり、分離対象物質と作業媒体の磁化率差を作業工程内で制御することが難しい。一方本手法では加圧し溶存酸素量を制御するため、分離作業工程内で作業媒体の磁化率を制御することが可能である。それによりさらに詳細な分離条件の検討が可能であり、分離のみならず、分離対象物質の磁化率差による制御も可能であり、その応用の範囲は広く、意義深い課題である。 本課題では、磁気力により、溶存酸素パーフルオロカーボン(常磁性を示す液体)中で、反磁性物質を浮上させ分離を行なう。分離プロセスには、粒子と流体の磁化率の差、粒子と流体の比重差、そして印加する外部磁場の強度と磁場勾配の積が重要な項目となる。よって作業媒体の磁化率について溶存酸素濃度と磁化率の関係を確認し、分離対象粒子との磁化率の差を検討し、計算により求められた磁化率の差に対応して、分離が実現可能な磁場発生源を用いた場合での分離可能な粒子と作業媒体の比重差を検討することを目的とした。そして溶存酸素量と媒体の磁化率の基礎データを取得し、溶存酸素量を圧力制御することによって、磁化率を制御し、対象物の位置制御および分離の可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進行度は順調であると考えます。本年度では作業媒体(常磁性液体)の溶存酸素濃度と磁化率の関係を調査し、その作業媒体の磁化率に対する分離対象粒子の分離条件を計算と実験により検討した。同時にその実験に使用するための装置の作製を検討した。次年度では具体的な装置を設計し、複数の物質の分離を進める予定と申請時に設定していた。現段階で溶存酸素量と作業媒体の磁化率の関係は、実験と計算より、把握および確認できている。そして簡易的な実験装置を作製し、完全な最適化には至ってはいないが、分離対象物質を単離することにも成功している。現状では分離対象物が、プラスチックなどの廃棄物系であり、有価物(申請時には次年度予定)までは着手できていないという点を考えると(2)のおおむね順調であるとし、(1)の予定以上とは評価しなかった。ただし、装置設計概念などに関しては、浮上方向である縦方向の分離だけではなく、水平方向の磁気力も利用した分離方法を検討しており、(1)の予定以上の進行度であると考えます。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年に得られたデータをベースとして、分離槽の作製と調整に重点を置く。磁場発生源にはソレノイド型超伝導磁石を想定していたが、現在横方向への分離も検討しており、容器形状によっては超伝導バルク磁石での検討をしている。横方向への分離を利用したほうが物質の位置制御がしやすくなる可能性が知見として得られている。また分離領域は強磁場が発生する超伝導磁石内にて分離結果の観察が必要となるため、磁石付近でも安定した結果を取得するための装置の調整なども必要と考えられる。磁場発生源からの距離(近いほど良い)を保ちながら、圧力容器の安全性も確保した装置設計が必要であるため、装置設計については、複数製作することが想定される。平成25年9月までに最終的な装置構造を確定する予定である。平成25年度は、複数の粒子が混在した状態からの分離実験を中心に検討し、分離対象についても有価物を検討してゆく予定である。本実験条件では粒子径に分離能力は依存しないとされているが、粒子径を小さくすることで粒子間の相互作用なども影響する可能性がある。本分離装置における分離の粒子径依存性についても検討を行なう。また最終年度となるため報告書の作成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究調査内容について、溶存酸素パーフルオロカーボンの磁化率が今後重要であることを考慮し、圧力と酸素濃度および磁化率についての基礎データの収集および検討が中心となった。その際に、磁化率を検討するための圧力容器や作業媒体については、複数回の使用が可能であり、実験結果に影響が見られない知見を得た。よって、それらの調達において今年度は研究費を抑えることが可能であった。しかし平成25年度は装置の設計と製作が複数にわたり、検討が必要となり、かつ作業媒体も毎回新しい状態でデータを取得する。複数の混在する試料からの分離、場合によっては有価物の分離の検討も予定しており、平成25年度では研究を遂行する上で試料および装置設計の予算が多く必要になると考えられる。
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