研究課題/領域番号 |
24760241
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
赤松 浩 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10370008)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 大気圧低温プラズマ / 拡散共表面バリア放電 / 滅菌 |
研究概要 |
平成24年度は,メートルサイズの大気圧低温プラズマの発生と,これによる壁表面の滅菌効果を明らかにすることを目的として計画を立てた.また,大気圧低温プラズマを生成するための高電圧パルス電源を作製することも計画した.その計画における研究成果は,以下のとおりである. 50mm×50mmのアクリル板を壁および誘電体とし,銅製の細い板状電極を配列して壁材料を作製した.銅電極の幅は2mmとし,電極間を1mmとした.隣り合う電極同士は高電圧-接地となっており,これが交互に並んだ構造になっている.電極間の短絡放電を防止するため,エポシキ樹脂で電極を覆い固めることで絶縁性を保っている.つづいてインバータ式ネオントランスを利用した高電圧電源を作製した.壁材料と高電圧電源を接続し,壁材料の表面に大気圧プラズマを生成することに成功した. 壁材料の放電特性として,電圧10kV,周波数17kHzの交流高電圧を印加すると,0.4-0.6Aのパルス電流が流れ,大気圧プラズマが生成されることを確認した.また,プラズマは,電極間にH文字型の発光として確認され,発生場所がランダムに変化することも分かった. つぎに,このプラズマから生じる化学的活性種の種類を分光計によって評価した.壁電極の表面に分光計の測定子を対向させ,プラズマを点灯した.このとき,プラズマの光からは波長300nm-450nmの範囲にいくつかの発光ピークが確認できた.これを評価すると,おもに大気中の窒素分子およびイオンの活性種による発光であることが分かった.滅菌に有効な活性種は,水酸基ラジカルOHおよび酸素原子ラジカルOであるが,本実験ではこれらからの発光は確認できなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本実験では,一般的な壁の表面に安定なプラズマを生成することが重要である.そのためには,壁の裏面に電極を配列する必要があるが,電極間の短絡放電を防止するには何らかの方法で電極同士を絶縁しなければならない.平成24年度の研究では電極間をエポキシ樹脂で固めることで絶縁を保持したが,実用面を考えると有効な方法とは言えない.この対策として,2つの方法を検討した.方法については,次の「今後の研究の推進方策」にて述べる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究で判明した問題点である壁材料への電極の配置方法として,2つの方法を検討した.ひとつは,アクリル材料にトレンチ状の凹を連続で作製し,この溝部分に電極を交互に配置する.さらに,もう一枚のトレンチ状材料で蓋をすることで電極間の短絡放電を抑制する.ふたつめは,アルミナを壁材料とし,電極をアルミナの内部に導入する方法で電極を作製する.この方法で拡散共表面バリア放電を生成する先行研究は他の研究機関で実施されている. このふたつの方法で壁電極を新調し,基礎放電特性を調べたのちに滅菌効果の評価を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,壁電極作製における問題点の解決として,アクリルを用いた壁電極の作製およびアルミナを用いた壁電極の作製に充てる予定である.また,平成24年度に作製した電源に,半導体スイッチング機構を導入し,任意の高電圧パルス波形を形成できるように改良する.これらの後に,滅菌効果を評価するため,大腸菌実験のための実験用具に研究費を使用する予定である.
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