研究概要 |
■課題『伝導冷却型多層超伝導コイルの安定性解析コードの開発』 高度先進ガン治療装置のための湾曲型超伝導マグネットには、直径1mm程度のNbTi超伝導線を、Surface winding 法を用いて製作した多層構造の超伝導コイルを使用する。超伝導コイルの冷却には、コイル外層に純アルミ板を取り付けた伝導冷却方式を用いる。そのため、超伝導コイルの通電時における冷却安定性が懸念される。そこで、超伝導コイルの安定性を評価するためのクエンチ解析コードの開発に取り組んだ。本解析コードでは、一次元非定常熱伝導方程式に、超伝導特性と冷却を模擬する項を加えた基礎方程式を前進差分法を用いて解いた。解析を行う際に用いた解析モデルの詳細は、以下の通りである。コイル内径:150 mm, コイル長: 810 mm, ターン数: 234, コイル層数:2, NbTi超伝導線の径:1 mm, コイルは樹脂浸漬されている。解析時の境界条件に関しては、コイル両端(リード部)は断熱状態とし、冷却板の長手方向の一方の端部は温度固定、もう一方は断熱状態とした。以上の解析条件で、伝導冷却型2層超伝導コイルの最小クエンチエネルギーを、様々な通電条件下で求めることができた。しかしながら、本解析を通して、今後の課題も得られた。本解析では、冷却安定性の詳細な評価を行うために、超伝導コイル及び冷却板を模擬した格子の間隔を、10mm程度にしている。そのため、非定常解析で安定な解を得るために、時間刻みを1μsec程度にしなければならず、解析時間に膨大な時間を要する。今後、数十層からなる多層化超伝導コイルの解析をする際、上記の解析条件では、解析解を得るのに非常に厳しい。そこで、今後、解析条件の見直しを検討する。
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