研究課題/領域番号 |
24760245
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
金 敬鎬 北見工業大学, 工学部, 助教 (70608471)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 色素増感太陽電池 / 有機太陽電池 / 変換効率 / 酸化チタン / 導電性ポリマー |
研究概要 |
安価で製造プロセスが簡単な有機系太陽電池の中、最も高い変換効率を有する色素増感太陽電池[酸化チタン、色素、電解質、対極で構成]は、環境問題やエネルギー問題の新しい解決策として注目を浴びている。しかし、従来のシリコンや化合物を用いた無機系太陽電池に比べ、低い変換効率は色素増感太陽電池の実用化に向けて大きな障害となっている。 本研究課題では、フレキシブル基板上の高効率色素増感太陽電池の研究開発を目指す。今年の研究内容は1)酸化チタンと透明電極の間に電気的特性改善のために液相法で成膜した酸化亜鉛薄膜の熱処理温度変化に伴う物性変化を評価した。酸化チタンに比べ、高いキャリア移動度を有する酸化亜鉛はバッファ層の役割を果たしで、色素増感太陽電池の変換効率を向上の可能性が高い。また、2)固体電解質への応用可能性を示している酸化ニッケルの熱処理温度およびCuドーピングによる物性変化の評価を行った。次に、3)導電性ポリマー対極(PEDOT-TMA)を用いた色素増感太陽電池の作製を行い、従来の白金(Pt)対極や導電性ポリマー対極(PEDOT-PSS)を用いた色素増感太陽電池との特性を比較した。 今後の研究課題では、ドーピングした酸化チタンの熱処理条件による表面形態や構造的・光学的・電気的特性評価および導電性ポリマー対極(PEDOT-TMA)のUVオゾン処理による電気化学・光学特性の変化を評価する。また、異なる光電極や対極を用いた色素増感太陽電池を作製し、その電流密度―電圧の関係を明らかにしてフレキシブル基板上の高効率色素増感太陽電池の開発を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、酸化チタン光電極および導電性ポリマー(PEDOT-TMA)対極の特性改善を通じて高効率色素増感太陽電池の開発を目的とする。今までの研究成果は、1)液相法による酸化亜鉛薄膜を作製・評価した。様々な成膜法の中で、液相法は優れた薄膜の均一性や原料組成物の容易な制御などのメリトを持ち、roll-to-roll プロセスを介して、大幅なコスト削減の可能性が寄せられる。熱処理温度により作製した酸化亜鉛薄膜の特性評価の研究結果は2013年3月の日本国内学会(応用物理学会)で発表した。また、2)酸化ニッケル薄膜の熱処理温度およびCuドーピングによる特性変化の評価を行い、2012年12月の国際学会(The 19th International Display Workshops in conjunction with Asia Display、IDW-AD)で発表した。次に、3)新しいPEDOT-TMA対極を用いた色素増感太陽電池を作製し、その特性を評価した。得られた太陽電池の特性は従来のPEDOT-PSS対極を用いた太陽電池と比べ、優れた変換効率を示した。その研究結果は2012年8月の国際学会(The 12th International Meeting on Information Display、IMID)で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、1)異なるドーパントを用いた酸化チタンの製膜条件や熱処理条件などの変化により作製した酸化チタン薄膜の表面形態や構造的・光学的・電気的特性を評価する。光電極(酸化チタン)の特性改善は色素増感太陽電池の変換効率の向上に重要な役割を果たすことになる。次に、2)新しい導電性ポリマー対極(PEDOT-TMA)のUVオゾン処理による電気化学・光学特性の変化を評価し、より優れた特性を有する導電性ポリマー対極の開発を図る。高機能性を有する対極は色素増感太陽電池の大きな開発課題となっている耐久性の改善に大きな期待が寄せられる。 特に、導電性ポリマーPEDOT-TMAの特性およびそれを用いたデバイスはまだ多く知られていないので、さらなる発展が期待される。異なる光電極や対極を用いた色素増感太陽電池を作製し、その物性変化に伴う太陽電池特性変化の相関を明らかにし、フレキシブル基板上の高効率色素増感太陽電池の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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