研究課題
グラフェンは、炭素材料の最安定構造であるグラファイト層状物の単層構造のことである。グラフェンは特異な線形バンド分散構造を有し、これから様々な特異物性が理論的に提唱されている。特にシリコンやガリウムヒ素などの既存半導体の値を凌駕するキャリア移動度を示すことから、現行電子バイスの微細化限界を打破し、年々肥大化している情報通信量を賄う材料として注目されている。しかしながらグラフェンを、基本電子デバイス構造である電界効果トランジスタ(FET)構造のチャネル材料に用いた場合、ある重要な問題に直面する。グラフェンは炭素質であるがゆえに、従来の二酸化シリコンなどの酸化物ゲート絶縁膜に対しては、その成膜中における酸素種ラジカルがグラフェン膜質に顕著なダメージに与えるために、適合しない。既存の酸化ハフニウム、酸化アルミニウムなどの高誘電率膜も一様に酸化膜物構造であるため、ゲート絶縁膜は新たな非酸化物系材料の開発が望まれている。そこで代表者は、同じ炭素材料でアモルファス構造を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)を、グラフェンFET (GFET)のゲート絶縁膜に用いることを試みた。特に、成膜中におけるプラズマダメージを最小化するために、独自の「光電子制御プラズマCVD (PA-PECVD)法」を用いたTownsend放電系で極小電力で成膜を行った。最終的にDLCゲート絶縁膜グラフェンFET (DLC-GFET)構造を得た。その電気特性測定から、相互コンダクタンス(gm)を検討したところ、上述の二酸化ハフニウム等の高誘電率材料を使用した場合に匹敵する高い性能を示すことがわかった。したがって、DLC-GFET構造を追求し、最適化およびスケールダウンしていくことによって、所望の超高周波デバイスだけでなく、グラフェンの特異な物性を活かした新たな物理デバイスの実現が期待される。
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Japanese Journal of Applied Physics, Institute of Pure and Applied Physics
巻: 52巻 ページ: 110123/1-11
10.7567/JJAP.52.110123