光量子効率を従来の背面入射型に比べ1桁向上させた全面入射型高輝度光電子銃と、2次電子検出器の改良を加えた時空間同時分解カソードルミネッセンス(STRCL)計測装置を用い、ハライド気相エピタキシャル法により成長されたGaN基板のSTRCL計測で観測されるスペクトル構造の空間依存性を解析して欠陥構造等の可視化を行うと共に、局所キャリア密度の変化がSTRCL信号に与える効果を評価した。 キャリア密度18乗cm-3の自立GaN基板の低温CLスペクトルは、自由励起子再結合と中性ドナー束縛励起子再結合の複合ピークとみられる3.473eVの発光帯を呈し、局所的には、ピークエネルギー3.432eVの発光帯とそのLOフォノンレプリカと考えられるピーク群が観測された。3.432eVの発光帯がI1型積層欠陥に起因すると考えると、そこには電子が局在しているためフォノンとのフレーリッヒ相互作用によりLOフォノンレプリカが観測されても矛盾しない。より詳細にダイナミクスを解析するため、自立GaN基板の単一積層欠陥に注目し、その近傍における低温局所STRCLの空間依存性を評価した。中性ドナー束縛励起子の再結合に起因する複合ピークのTRCL信号の立ち上がりは積層欠陥からの距離に比例して遅れる傾向にあり、自由励起子の拡散によってI1型積層欠陥の発光に時間遅延が生じることが分かった。また、発光寿命は積層欠陥に近づくと短くなることから、I1型積層欠陥近傍に中性ドナー原子が存在すると、ドナーから励起子を捕獲する過程のあることが示唆された。
|