研究課題/領域番号 |
24760252
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岩崎 孝之 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80454031)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / ヘテロエピタキシャル成長 / バッファ層 / パワーデバイス |
研究概要 |
次世代低損失パワーデバイス材料であるダイヤモンドの大面積合成を目指し、下地となるバッファ層の開発を行った。バッファ層はシリコンやサファイアなどの大面積基板とダイヤモンドの間に存在する層であり、その表面に直接ダイヤモンドを合成されるため、ヘテロエピタキシャル成長において最も重要なものである。新規バッファ層としてルテニウムおよびフッ化グラフェンの開発を行った。ルテニウムはサファイア上に高周波マグネトロンスパッタ蒸着により、300℃において堆積させた。反射高速電子線回折およびX線極点図観測から、堆積させたルテニウムはサファイアの結晶方位にそろった単結晶であることを確認した。スパッタ蒸着後の大気暴露によりルテニウム表面に不純物が吸着するが、真空中での高温加熱により清浄面を露出させることにも成功した。加熱、反射高速電子線回折、およびダイヤモンド合成用チャンバーは真空により接続されているため、清浄面の露出、回折による確認、さらにその清浄面上へのダイヤモンド合成を一貫して行うことが可能である。ルテニウムに加えて、フッ化グラフェンの形成を実施した。グラフェンはsp2結合カーボンにより構成させているが、グラフェン表面にフッ素原子が付加することによりsp3結合を有するフッ化グラフェンへと構造が転移する。従来の二フッ化キセノンによるフッ化処理ではなく、半導体プロセスで用いられる反応性イオンエッチング装置内において、プラズマでのフッ化を行った。主にフッ素ラジカルを反応に使用することにより、グラフェンにダメージなくフッ化できることを確認した。表面のフッ素濃度はプラズマ処理時間により再現性良く制御可能である。上記サファイア上ルテニウム表面にグラフェンを形成し、フッ化することにより大面積フッ化グラフェンを得ることにも成功した。これら新規バッファ層形成技術の確立を大面積ダイヤモンド合成へと展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目的は大面積ダイヤモンド合成のための新規バッファ層開発である。【研究実績の概要】において述べたように、新規バッファ層の合成およびその表面構造解析に成功したことから、予定通り研究は進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
開発したバッファ層上へのダイヤモンド合成およびその膜質の評価を行う。高品質なヘテロエピタキシャル成長ダイヤモンド膜を得るには、初期段階の核形成密度を上昇させることが重要となる。バッファ層の表面状態は炭素イオン・ラジカルの吸着に大きく影響を与えるため、種々の処理を行ったバッファ層表面上でのダイヤモンド核密度を調査する。金属バッファ層では、水素プラズマ処理、オゾン処理、さらにフッ素プラズマ処理などを行う。フッ化グラフェンでは、フッ素密度を変化させ、ダイヤモンド核形成への影響を観察する。観察には、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などによる形状のみならず、反射高速電子線回折やX線光電子分光法などを使用し、界面状態の原子レベルでの評価を行う。得られた知見をもとに、より欠陥の少ないダイヤモンド合成のための条件最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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