研究課題/領域番号 |
24760254
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤坂 大樹 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (80500983)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アモルファス炭素膜 / 重水素 / 同位体効果 |
研究概要 |
アモルファス炭素系膜の作製段階での同位体水素の導入による電子欠陥の抑制を確認するためのアモルファス炭素系膜の作製を12CH、12CD、13CHの3種類のメタン系同位体原料から高周波プラズマ化学気層析出装置を用いて実施した。其々のガスより通常の水素化12Cアモルファス炭素膜を基準試料として作製し、重水素化アモルファス炭素膜及び13C化アモルファス炭素膜の作製を行った。まず、これら3種の膜を同一条件で作製して比較するためにこれら膜が得られる条件の確定を行った。作製した膜の構造をまず、評価した。膜のsp2とsp3結合炭素の比率を吸収端近傍X線吸収微細構造:NEXAFSによって、膜の水素もしくは重水素に対する炭素原子の比率をラザフォード後方散乱分析装置:RBS/弾性反跳検出分析装置:ERDA測定および膜厚の測定から評価した。本結果としてまず、sp2/sp3比および水素濃度を同程度に制御する事ができる事を示した。 さらに、作製した膜の電子特性を可視紫外分光法により評価したところ、紫外域の吸収特性が3種類で異なり、重水素化および13C化により通常のアモルファス炭素系膜と事なる特性を有する事が示された。また、重水素化では膜内に導入される重水素量が水素化時と異なる事が示された。この結果は電子欠陥密度に差がある事が示唆するものであり本研究の主体である欠陥密度低減に大きな寄与がある事を同時に示す結果であった。これらの結果が早期に得られた事から25年度に予定していた素子作製を前倒しして開始し、アモルファス炭素系膜内に形成する不純物順位のエネルギーと光照射によるキャリア生成能を調査するための素子作製を実施し、電極形成条件を確定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度に予定していた膜の作製条件の確定と欠陥密度や電子構造に同位体元素の添加が影響するかどうかといった基本的な要素は十分満たす結果を得る事が出来た。進捗が早く、結果を早期に得られたため、さらに24年度内に25年度に予定していた素子作製を前倒しして開始し、アモルファス炭素系膜内に形成する不純物順位のエネルギーと光照射によるキャリア生成能を調査するための素子作製を実施し、電極形成条件を確定するところまで先行している。
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今後の研究の推進方策 |
電極形成技術を確立し、MIS素子を作製してその光起電力能および温度特性から電子構造を評価し、同位体が与える影響を精確に評価する。まず、Si上に重水素化アモルファス炭素系膜および水素化アモルファス13C炭素系膜を形成し、その上に電極を形成してMIS構造を構成する。光を照射し, 起電力量の波長依存性を十数Kから常温まで評価する。Siとアモルファス炭素膜の界面での電子障壁の状態を評価する。本評価は高インピーダンス検出系と温度制御冷却系より構成されるシステムで実施する。アモルファス炭素系膜の高インピーダンスに対応した測定系を本年度でまず構成する。このアモルファス炭素系膜の電子構造が既知であるSi基板と接合した素子の接合界面の電子障壁のキャリアの温度依存性と波長依存性からアモルファス炭素膜内に形成される不純物順位のエネルギーと量を明らかにする。キャリアの生成能が低い場合および真性半導体で無く、電子もしくは正孔濃度が高い極性半導体である場合にはドーピングによる極性制御とキャリア生成を行う。真性半導体のキャリア濃度調整が難しい場合には高濃度p型もしくはn型ドーピングを行い、3つの極性半導体技術の基礎を確立する。 最終的に半導体素子として機能するかを実際にデバイスを作製して示す。今回は光起電力素子を試作し, 光電変換を行うデバイスを試作する。先のn型, i型, p型のアモルファス炭素系半導体膜を積層し、光起電力素子を作製し、光起電力変換素子として働くことを示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は膜の電子構造を評価するために高インピーダンス検出系と温度制御冷却系より構成されるシステムを作製する必要がある。このため本年度で10K程度まで冷却可能な電子欠陥不純物準位測定システム温度制御冷却系を購入予定である。また、進捗速度が速いため昨年度より使用している同位体メタンの各ボンベおよび基板の購入、ドーパント用ガスを物品費で購入予定である。旅費として計上されている予算では2013秋の京都で開催される応用物理学会および新潟の長岡技大でのRBS/ERDA測定および兵庫県大で行われているNEXAFS測定を行うための旅費として予定している。その他では論文の投稿料と上記学会の参加費としての使用を予定でしている。24年度の未使用分に関してはERDA/RBSの測定が先方装置の故障により先送りされたためで旅費として使用予定である。
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