本研究では、次世代の超高効率・低コスト太陽電池として期待される中間バンド型太陽電池の実現を目指し、単一層でマルチバンドを実現できる高不整合材料によるマルチバンドギャップ半導体ZnTe1-xOx (ZnTeO)を取り上げ、高品質な同半導体薄膜の成長と、本材料系での中間バンド型太陽電池の原理実証、ならびに中間バンドを介した光吸収特性の向上を目的とした。平成24年度は、格子不整合を緩和し、高品質な結晶を得るため、ZnTeOに共有結合半径の大きなCdを添加したZn1-xCdxTe1-yOy(ZnCdTeO)による格子整合系でのエピタキシャル成長の実現を目指し、MBEによるZn1-xCdxTe1-yOy膜の成長条件の導出を行った。その結果、ZnTe基板に格子整合するZnCdTeO膜を得ることができ、その光学特性を明らかにした。平成25年度は、中間バンドを介した光吸収特性の向上を目的に、不純物添加による中間バンドへの電子ドーピングを目指して研究を行った。具体的にはZnTeO薄膜のMBE成長中にAlをドナーとして添加し、その特性への影響を評価した。X線回折により評価した結果、Al添加量の増加と共に、ZnTeOからの回折ピークが低角度側にシフトしており、酸素濃度が減少していることが明らかとなった。Alは酸素と強く結合を形成することから、薄膜内に局所的にAl酸化物が形成され、ZnTeOを形成する酸素濃度が減少した可能性が高く、今後Alに代わるドナー不純物で同様の実験を行う必要がある。ZnTeOおよびZnCdTeOを用いた中間バンド型太陽電池構造を試作し、中間バンドを介した二段階光吸収による電流増加について、赤外バイアス光を用いた外部量子効率測定により評価した結果、バイアス光の照射によって電流が増加することを確認することができ、中間バンド型太陽電池としての原理を実証できた。
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