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2012 年度 実施状況報告書

有機酸塩の生成・分解反応を用いた電子デバイスの低温接合に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24760267
研究機関群馬大学

研究代表者

小山 真司  群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70414109)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード微細接続 / 環境材料 / 精密部品加工 / 低温接合 / 金属塩 / 有機酸 / 表面改質
研究概要

近年,拡散接合法は母材を溶融することなく固相状態で顕著な変形を加えず接合する方法であることから,精密組立に利用されるようになった.しかしながら現実の接合面は自然酸化皮膜で覆われており,接合界面特性を大きく支配してしまう.
そこで本年度は,環境調和型の有機酸を用いた自然酸化皮膜に対する表面改質効果について検討した.その結果,Sn/SnおよびSn/Cuを固相接合しようとした場合には200℃以上の接合温度を要したが,クエン酸により表面改質処理を施した場合は,Sn/Snにおいては40℃,Sn/Cuにおいては70℃以上低温でSn中で母材破断する継手が得られることが明らかとなった.さらに,はんだレスCu/Cu直接接合についても検討を進めた結果,改質処理を施さなかった場合,実用強度に達する接続部を得るための接合温度は400℃であったが,クエン酸を用いた改質処理を施すことで100℃以上低温で同等の接続強度を有する継手が得られることが明らかとなった.
有機酸による表面改質作用を調べるため,X線回折(XRD),X線光電子分光法(XPS)などを用いて表面解析した結果,クエン酸をはじめとする有機酸に自然酸化皮膜を含む接合面を曝露することで,金属塩の生成と酸化皮膜の膜厚減少を生じることが分かった.また示差走査熱量測定(DSC)により生成させた金属塩の熱分析を行った結果,接続部の強度上昇を生じた接合温度域で熱分解することが分かった.したがって,これらの改質作用が接合温度の低温化に大きく寄与していることが明らかとなった.
これらの低温接合技術は,消費エネルギーの低減と接続部の微細化の歩留まりを解消する工法として期待され,接合界面の金属間化合物(脆弱層)形成を最小限に抑えられることから,高い信頼性が要求される接続部への適用等,要素技術として期待される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本申請研究では,Sn/Sn,Sn/Cuなどの接続部に対し,環境調和型の有機酸を用いた改質操作による還元作用を利用した低温固相接合を主題としている.
本年度は主としてSn/SnおよびSn/Cuについて有機酸にクエン酸を用いて検討を進めた結果,Sn/Cuにおいては目標値(接合温度180℃)を十分に上まわり(160℃),またSn/Cuにおいても目標値(接合温度160℃)を達成できた(130℃).さらに平成25年度の研究テーマであるはんだレスCu/Cu直接接合についても検討を開始しており,これまで有機酸にクエン酸を用いた場合,目標値(接合温度350℃以下)を大きく上回る結果(300℃)が得られていることから,この評価とした.

今後の研究の推進方策

研究計画通り,電子実装の今後期待される要素技術であるはんだレス接合について検討を進める.具体的には,平成24年度に得られた成果を発展的に利用し,Cu/Cu,Al/Alなどの同種金属間の接合部を対象として,(1)ワイヤーボンディングを想定した各種金属材料の細線と基板電極材料板材を加熱・加圧しながら接合し,(2)はく離強度試験により接続部強度評価を行い,(3)接合界面組織についても調査する.
さらに,低温固相接合を様々な分野のニーズに適用させるため,幅広い金属材料を研究対象とし,各種めっき表面や半導体用配線材料など,市場ニーズを調査することで改質処理の実用化研究を実施する.

次年度の研究費の使用計画

電子実装において,めっきによる電極形成法は要素技術であり,多用されている.そこで多様化する金属組成に対応するため,めっき実験装置および金属部材を計上している.また,Snは酸化されやすいため,改質済試料の保存用真空デシケーターを計上している.さらに,本申請研究で得られた成果発表のための旅費および論文投稿料を計上している.

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Sn/Sn固相接合強度に対する金属塩生成接合法の適用効果2013

    • 著者名/発表者名
      小山 真司
    • 雑誌名

      スマートプロセス学会誌

      巻: 2 ページ: 47-51

    • 査読あり
  • [学会発表] クエン酸を用いた金属塩生成接合法によるCu/Cu固相接合

    • 著者名/発表者名
      萩原尚基
    • 学会等名
      日本金属学会
    • 発表場所
      愛媛大学 城北キャンパス(愛媛)
  • [学会発表] Al/Cu固相接合強度に及ぼすNaOH水溶液の表面改質作用

    • 著者名/発表者名
      秦紘一
    • 学会等名
      日本金属学会
    • 発表場所
      愛媛大学 城北キャンパス(愛媛)
  • [学会発表] Al合金/SUS304のギ酸を用いた金属塩生成接合条件の最適化

    • 著者名/発表者名
      松原広太
    • 学会等名
      日本金属学会
    • 発表場所
      愛媛大学 城北キャンパス(愛媛)
  • [学会発表] 金属塩生成接合法によるAlとCuの固相接合

    • 著者名/発表者名
      秦紘一
    • 学会等名
      溶接学会
    • 発表場所
      奈良県文化会館・奈良商工会議所(奈良)
  • [学会発表] ギ酸を用いた金属塩生成接合法によるAl合金/SUS304の固相接合

    • 著者名/発表者名
      松原広太
    • 学会等名
      溶接学会
    • 発表場所
      奈良県文化会館・奈良商工会議所(奈良)
  • [学会発表] ギ酸を用いた金属塩生成接合法によるCu/Cu固相接合

    • 著者名/発表者名
      萩原尚基
    • 学会等名
      溶接学会
    • 発表場所
      奈良県文化会館・奈良商工会議所(奈良)
  • [学会発表] 環境調和型低温固相接合の確立に向けた有機酸による接合表面改質技術の開発

    • 著者名/発表者名
      小山真司
    • 学会等名
      日本溶接協会・マイクロソルダリング技術 教育・認証フェスタ
    • 発表場所
      芝浦工業大学 豊洲キャンパス(東京都)
    • 招待講演
  • [学会発表] A Study of Solid State Bonding Strength of Al/Cu by Using Metal Salt Generation Bonding Method on Al Surface

    • 著者名/発表者名
      Shinji Koyama
    • 学会等名
      Visual-JW2012
    • 発表場所
      Hotel Hankyu Expo Park (Osaka)
  • [学会発表] 金属塩生成接合法を用いたアルミニウムの低温固相接合

    • 著者名/発表者名
      小山真司
    • 学会等名
      日本溶接協会・はんだ・微細接合部会
    • 発表場所
      群馬大学(群馬)
    • 招待講演
  • [図書] マイクロ接合・実装技術2012

    • 著者名/発表者名
      藤本 公三
    • 総ページ数
      690 (549-552, 606-610)
    • 出版者
      産業技術サービスセンター
  • [産業財産権] 金属部材の接合方法2012

    • 発明者名
      小山 真司
    • 権利者名
      群馬大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2012-128266
    • 出願年月日
      2012-06-05

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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