ゲート酸化膜破壊を一種のヒューズとして用いた、1度だけ書き込み可能な不揮発メモリ(OTP ROM)は、標準のCMOSプロセスだけで製造可能な為、アナログ回路の特性補正やチップ固有ID等に幅広く使用されており、近年その大容量化が求められている。そこで本研究では、大容量のOTP ROMの実現を目指し、ゲート酸化膜の破壊発生位置を制御し、その位置情報を利用した多値電子ヒューズの開発を行った。 従来のゲート酸化膜破壊を用いたヒューズは、酸化膜破壊の有無を情報として利用したが、本研究で提案するヒューズは、それに加えてゲート酸化膜破壊の発生位置という新しい概念を利用する事で情報の多値化を行う。一方、このような多値ヒューズの実現には酸化膜破壊位置の意図的な制御が必要となるが、その手法については明らかでなかった。そこでまず、ゲート酸化膜破壊位置を制御する手法を提案し、その有効性の実証を行った。本実証には0.18umプロセスで製造されたチップを用いた。ヒューズとして用いるトランジスタのドレイン、ソース、及び、ウェルに適切な電圧を印加した状態で、ゲートに高電圧のストレスを与える事で、ゲート酸化膜の破壊位置をソース端又はドレイン端どちらかに制御できる事を確認した。これにより、1ヒューズに対して3つの状態、つまり1.5ビット相当の情報を持たせる事が可能となった。 次に、この多値ヒューズを用いたOTP ROMの設計を行った。ヒューズの多値化により、ビット当たりのメモリセル面積を従来技術に比べて38%削減出来る事を確認した。128kビットで構成されるOTP ROMを0.18umプロセスで製造し、多値ヒューズを含んだメモリセルの情報を適切に読み出せる事を実測で確認した。
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