研究課題/領域番号 |
24760272
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宇野 和行 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (20550768)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高性能レーザー / 光源技術 / プラズマ / 応用光学・量子光工学 / 量子エレクトロニクス |
研究概要 |
本研究では,軸方向放電励起方式と誘電体バリア放電方式を組み合わせた新しいエキシマランプ型低ガス圧軸方向放電励起方式により,放電キャピラリープラズマをレーザー媒質としたペンシル型真空紫外レーザー(アルゴンエキシマ(Ar2*)では波長126 nm,クリプトンエキシマ(Kr2*)では波長147 nm,キセノンエキシマ(Xe2*)では波長172 nm)の発振を目的として,その基礎パラメータを明らかにする. 平成24年度は,以下の4つの実験を行った.1,エキシマランプ型軸方向放電励起方式によるAr2*の発光の分光特性調査を真空紫外分光器と光電子増倍管を用いて行った.希ガスエキシマの波長に対する発光強度,また発光時間波形が得られ,蛍光寿命が解析できる.2,エキシマランプ型軸方向放電励起方式によるArの可視域における分光特性調査をファイバー分光器を用いて行った.これは,研究実施計画には記載していなかったが実施した.発光波長から発光種を特定し,励起過程により,レーザー発振に寄与する一重項が生成されているかを検討できる.3,エキシマランプ型軸方向放電励起方式によるAr2*とXe2*の発光特性をそれぞれのバンドパスフィルタと光電子増倍管を用いて行った.特に,Xe2*では,高強度化を目的に,2種類の放電管と6種類の励起回路を用いて,真空紫外光の発光特性を調査した.1の実験のフォローとして計画し,1の測定やレーザー発振の実現のために必要と考えられたため,実施した.4,2本の放電管をオシレータとアンプとして用いて,Xe2*における利得の時間分解波形を調査した.オシレータとアンプを,光学素子を用いずに直接接続する方式と光学素子を用いて放電空間を切り離して接続する方式の2つの方式を試みた.利得係数から,レーザー発振可能な共振器の設計が可能なため,本実験は非常に重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は,以下の4つの実験を行った. 1,エキシマランプ型軸方向放電励起方式によるAr2*の発光の分光特性調査を真空紫外分光器と光電子増倍管を用いて行った.しかし,発光強度が低い,もしくは測定感度が低いために,本測定系における真空紫外光の信号をとらえることができなかった.そこで,真空紫外光の発光を確認する為に3の実験を行った. 2,エキシマランプ型軸方向放電励起方式によるArの可視域における分光特性調査をファイバー分光器を用いて行った.低ガス圧と高ガス圧で発光波長つまり発光種が異なり,低ガス圧で一重項が生成されていることが示唆された. 3,エキシマランプ型軸方向放電励起方式によるAr2*とXe2*の発光特性をそれぞれのバンドパスフィルタと光電子増倍管を用いて行った.光路のN2パージの有無により,真空紫外光が生成されていることを観測した.10 Torr以下の低ガス圧で発光半値幅が数nsの一重項と考えられる発光を,数十から数百Torrの高ガス圧で発光半値幅が数百nsの三重項と考えられる発光を観測した.蛍光寿命の解析は現在行っているところである.本課題で提案したウォールカップル回路は,一重項の生成効率が高く有用性を示した.また,本研究成果をもとに,平成25年度に上述1の分光特性調査を再度行う予定である. 4,2本の放電管をオシレータとアンプとして用いて,Xe2*における利得の時間分解波形を調査した.しかし,真空紫外光の光子エネルギーが高く,先に生じた真空紫外光がもう一方の放電空間を電離するため,このような実験系では利得の測定が難しいことがわかった.得られたデータから,何らかの補正により利得が計算できないか検討しているところである.また,1本の放電管において,共振器の反射率に依存する発光強度を測定し,そこから系全体の利得を計算する方法も検討している.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,以下の4つの調査・実験を行う. 4,波長126 nmと172 nmの高反射の出力鏡と全反射鏡を購入し,レーザー発振実験を行う.レーザー発振の実証は,出力光の増加と現在注文しているビームプロファイラによるレーザービームの観測,下記7に関連して波長狭帯域化の観測で行う.平成24年度に得られた発光の時間波形において,発光の半値幅が数nsと非常に速いため,時間狭帯域化の観測は難しいと考えられる. 5,反射率の異なる複数の出力鏡と全反射鏡を購入し,反射率に依存する出力光強度を測定し,システムの利得を計算する.共振器長が放電長・利得長と対応するため,1組のミラーで利得長を変化させると,放電の条件が変化し,利得が計算できないため,反射率の異なる複数のミラーを購入する予定である. 6,上述4と5の実験のために,購入物品の納品までに,平成24年度に実施した3の実験をすすめ,一重項の高強度発光が得られる条件を調査する.平成24年度は主にXe2*に関して本実験を行ったため,平成25年度は主にAr2*について調査を行う.同時に,平成24年度の結果の蛍光寿命に関する解析がまだ十分でないため,あわせて行う. 7,上述6で得られた成果をもとに,平成24年度の測定ができなかった1の真空紫外分光器と光電子増倍管を用いた分光特性の調査を行う.平成25年度より,本研究に関して,企業との共同研究が開始するため,企業が有する設備(真空紫外分光器など)や技術を借り,本調査を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度において,購入を計画し発注したビームプロファイラ(価格696千円)が,未だ納品されておらず(センサ部分の不良のため)本研究計画が遅れたため,当該年度の実績が計画より少なかった.また,本ビームプロファイラは平成25年度5月に納品予定である. 平成25年度に計画している4と5の実験に関して,1枚20万円相当の真空紫外のミラーを6枚の購入を検討している.内訳は,Ar2*用の全反射鏡1枚,Ar2*用の反射率の異なる出力鏡3枚(98%,95%,92%),Xe2*用の全反射鏡1枚,Xe2*用の出力鏡1枚(98%)であり,出力鏡の波長や反射率,枚数は,メーカーや実験の実施状況により変更する場合がある. 残金は,ガスや配管の部品,電気素子などの消耗品に使用する予定である.
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