本研究課題では、土壌中の水分量と、水分中のイオン濃度の情報を分離・計測できる手法の確立とセンサの実現を目指した。3か年の研究期間において、計測手法の確立、半導体型センサチップの製作、計測回路の実現を目指してきた。 初年度となる平成24年度では、土壌の電気的なモデル化を行うことで位相と振幅の絶対値により水分量とイオン濃度を分離して計測できることを証明した。2年目の平成25年度はSi-LSIプロセスを用いたセンサチップの製作に注力した。計測の下限値を向上させるため絶縁分離層の厚膜化とセンサ表面の膜の検討を行い、センシング感度の向上に成功した。最終年度の平成26年度では、精密農業や土砂崩れなどの現場計測を行うことができるセンサ計測回路の製作を行い、山の斜面でのセンサ応答性評価を行った。初段増幅回路でアナログ信号からディジタル信号に変換させることにより31%の消費電力削減を実現し、電池駆動が可能で長期間使用できるシステムの製作に成功した。このセンサシステムを用い、応答性評価を行うため、山の斜面にセンサを設置して雨の降水量とセンサ計測結果の比較を行った。昨年度検討を行った親水性特性を向上させたセンサと未処理のセンサの両方を設置し、その効果検証も行った。その結果、未処理センサは雨の降水にほとんど反応できていないのに対し、親水性センサは降水量に応じた反応を示すことができ、土壌水分量の変化を捉えることに成功した。 研究課題に対する目標・計画を達成することができ、山の斜面での実証実験にも成功することができた。この成果を元に、特許出願や論文発表を行い、研究成果について広く情報発信を行ってきた。今後、他分野での実証実験を推進していくと共に、更なる情報発信により実用化に向けた取り組みを積極的に行っていく。
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