研究課題/領域番号 |
24760282
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
岸原 充佳 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (50336905)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | X線リソグラフィ / 微細加工 / 導波管 / スパッタ蒸着 / 電解めっき |
研究概要 |
本研究では,サブミリ波領域(300GHz~)へ直接応用できる構成技術の確立を行うことを目的に,放射光直接エッチング法で微細テフロン構造体を形成し,その表面に金属膜を蒸着させることにより短ミリ波帯(G帯,140-220GHz)の導波管コンポーネントを試作・評価した. 試作は,まず,G帯導波管寸法 (1.29mm×0.65mm) に対して,比誘電率2.04のテフロンが充填された導波管寸法を0.90mm×0.40mmに選ぶことで,TE10モードのみがG帯で伝搬可能となるようにした.24年度は,直線導波管およびマイターベンド導波管を試作した.後の測定装置との接続を考慮して,テフロン導波管両端には整合用誘導性窓を組み込む構造を採用した. 評価のため,VNA(Agilent E8361C)を50-70 GHzのV帯信号源として使用し,これをVDI製トリプラ(WR5.1x3 Broadband Tripler)で3逓倍してG帯信号(150 - 210 GHz)を得る測定系を構築した.これでテフロン導波管の伝送特性のみをVDI製デテクタ(WR5.1 Zero-Bias Detector)で検波電圧として測定する.また,断面積の異なるテフロン導波管とWR5フランジを接続するため,テフロン製フランジを放射光エッチングで別途製作して用いた.定在波が立つため良好な測定は出来なかったが,帯域内で平均すると直線,ベンドそれぞれ72.8%,69.7%の電力が伝送し,導波管として機能していることを確認した. 以上により,本製作プロセスで短ミリ波帯の導波管が製作できることを明らかにしたが,正確な伝搬損失の算定,機能回路の設計などは今後の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射光エッチングによるG帯テフロン導波管の試作と測定環境の構築を平行して行い,両者の完成時期を考慮しながら研究を進めた.これにより,年度内に試作と評価を済ませ,その成果を国内学会で発表するという最低限の目標は達成することができた. 十分な量の試作導波管を準備することができず,現状の評価結果は不十分なデータであると考えているが,放射光施設の限られた利用可能回数を勘案すると,おおむね順調に結果が出ていると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
25年度も引き続き,G帯でテフロン導波管コンポーネントの試作を行う.試作は,24年度と同様に,放射光直接エッチング法で微細テフロン構造体を形成し,その表面に金属膜を蒸着させることにより製作する.直線およびベンド導波管が基本になるが,まず,長さの異なる複数の直線導波管を試作してその伝送特性を測定することで,本G帯テフロン導波管の損失を分離する.そして,材料となるテフロンおよび金の誘電体損と導体損の理論値・シミュレーション値と比較する. 次に,24年度の試作では,放射光エッチングの実施時にテフロン試料温度を220℃程度に加熱して露光したが,テフロンの線膨張で,加工精度が劣化している疑いがある.そこで,150℃程度の加工レートの小さい状態でエッチングを試みる.エッチング後のテフロンパターンを顕微鏡観察により評価する.同時にバンドパスフィルタの設計・製作を試みる. 放射光エッチングでは,マスクの精度が重要になる.電子線描画装置を用いた数100nm精度のマスク自主作製を試みると共に,外注品のX線マスクを用いた露光も1度は試みる. 24年度に簡易的に用いたテフロン導波管とG帯標準導波管の変換器を再設計・製作する.これを測定に用いる.1/4波長変成器と整合板を備えた同構造でG帯でも実現可能と考えている.最後に,成果を学会発表し,論文にまとめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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