研究課題/領域番号 |
24760284
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山口 健 日本大学, 理工学部, 助教 (90434125)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 計算機合成ホログラム / 高速計算 / 実像再生 / アルコーブホログラム / ホログラフィ / フリンジプリンタ |
研究概要 |
初年度は,これまでの全方向視差を含む計算機合成ホログラムの計算手法から,水平高方向の視差のみを有する計算機合成ホログラムの計算手法に変更を行った.これは,全方向視差を含む計算機合成ホログラムは計算量が膨大になってしまうため,1つの計算機合成ホログラムを計算するのに,数日かかってしまうため計算の高速化が必要であったためである.そこで,立体視に比較的重要でない垂直方向の視差を犠牲にすることで,約20倍の計算速度を実現することができた. 現在著者らのグループで研究を行っている計算機合成ホログラムの出力装置は0.44umと高精細なホログラムを出力することが可能である.しかし,ホログラムでの回折角が十分でないため,再生像の大きい計算機合成ホログラムを出力するためには,物体とホログラムを離すことが必要であるため,大きなサイズのホログラムを計算しなくてはならない.本研究の成果により,これまでよりも半径のサイズを1.5倍にしたホログラムを約41分で計算することが可能となった.また,使用した物体データも約70,000万点の点光源からなる複雑な物体を用いた.用いる隠面処理手法を改良することで,どの視点からも正しい像を観察することが可能となった. 再生装置に関しても,修正を加えた.これまで,SUSミラーやアクリルミラーを使用して,出力した計算機合成ホログラムを照明する光を作り出していた.しかし,SUSミラーでは素材が硬すぎるためミラーに縞模様が生じてしまい,アクリルミラーでは柔らかすぎるため,端部がたわんでしまい,計算時のパラメータと異なる参照光にとなり,十分な視域を確保することができなかった.そこで,本年度はSUS素材を型として使用し前面にアクリルミラーを配置することで,再生像にノイズが生じず約170度近い視域の実像を再生することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度行った干渉縞の計算アルゴリズムの変更により,計算速度の向上が実現されたが,再生される像は単色のままである.本研究では,フルカラーの3D実像を再生することを目的としている.フルカラー像の再生を行うためには,RGB3色の干渉縞を計算することが必要である.本年度構築した計算システムを用いて,各波長の干渉縞を計算し合成することでフルカラーの干渉縞を生成することが可能となる. また,本年度は当初ワイヤーフレームなどの隠面処理を必要とない物体データを用いる予定であったが,実際の出力では約70,000点からなる不複雑なオブジェクトを用いた.これまでの隠面処理手法を改良し,水平視差のみの物体データを出力できるようした.また,カラー像干渉縞にも対応できるよう,カラーの物体データを生成できるよう改良を行った.ただし,初年度は生成した物体データの内赤色のみを使用した計算機合成ホログラムを作成した. また,初年度に作成予定であったシミュレーションは次年度以降に行っていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,カラーの実像再生のため干渉縞の干渉縞計算のアルゴリズムの変更を行う.これまでは,単色の干渉縞を計算するものであったが,これを拡張しRGB3色の干渉縞を計算し合成するようにする,この時色の各像が再生される位置を同じにすることで,垂直方向のある位置で正しい3次元フルカラー像を観察することができるようになる. カラー像再生のための再生用光学系の改良を行う.これまでは,単色像(赤色)を再生するため,赤色のレーザーを用いて像再生を行っていた.本年度はフルカラーを再生するため,白色光が必要となってくる.しかし,白色レーザは非常に高価であるため本研究費では購入はできない.そこで,高輝度の白色LEDを用いた光学系の設計と製作を行うことで,フルカラーの像再生を行う. また,初年度において作成した隠面処理のプログラムは,計算時に使用する物体データと実際に観察する時に見るホログラムの位置が物体の位置によって異なるため,像の大きな計算機合成ホログラムを出力する際には,正しい像が観察できない可能性がある.そこで本年度は,物体データにホログラム面上での計算範囲を付加することで,この問題を解決する. さらに,初年度行えなかった再生像のシミュレーションも本年度以降に行っていく予定である.シミュレーションを開発することで,計算に誤りがあった場合など事前に確認でき,時間や費用などの無駄を低減できる.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の研究費では,まず再生光学系のための光源を購入する予定である.25年度はではフルカラー像の再生を行うため,光源を単色のレーザから白色光源にする必要がある.高輝度の白色LEDを使用した再生光学系の構築を本研究費を用いて行う予定である.計算機合成ホログラムを出力するためのホログラム感材や出力装置の光学部品なども購入する. また,RGBの情報を含む高解像度の干渉縞を計算するため,より強力な計算機の購入を行う. 研究成果の報告として,1月に米国で行われる国際会議に出席する予定である.
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