研究課題/領域番号 |
24760284
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山口 健 日本大学, 理工学部, 助教 (90434125)
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キーワード | ホログラフィ / 実像再生 / アルコーブホログラム / 計算機合成ホログラム / フルカラー再生 |
研究概要 |
前年度研究において,水平方向視差のみを有する計算機合成ホログラムの計算手法を確立し,その像を確認することができた.しかし,初年度の再生像はこれまでの全方向視差がある半円筒の実像再生計算機合成ホログラムと同様,単色であった. 本年度の研究では,レインボウホログラムの計算手法を取り入れることで,フルカラーの再生像の再生を行った.レインボウホログラムは水平スリットを用いて,垂直方向の任意の位置にRGB各波長の再生像を重ね合わせることができる手法である.そこで,本ホログラムの形状(半円筒)に合わせ,仮想スリットを半円筒とした光学モデルを構築する計算手法を確立した.再生された像を取り囲むように,等距離から観察位置に応じたフルカラー像を観察することが可能になった.今回出力したホログラムは約77.6GB(718,080 x 108,00)の解像度を有し,点光源数約8,000点のオブジェクトを用いて約123分の計算時間を要した. また,本年度はフルカラーの像再生を行うにあたり再生光学系の変更も行った.これまでは,単色のホログラムであったため,光源も単色のものを用いていた.しかし,本研究ではフルカラーの像再生を行うため,光源としては白色またはRGB各色が必要となる.計算したホログラムにおいて,照明光の波長を選択することが可能であるため,本年度は白色LEDによる照明を行った.白色LEDをそのまま用いると光源が大きさを持つため,像がぼやけてしまう.そこで,レンズとスリットを用いてノイズを軽減することでシャープな像を観察することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目までの研究成果により,本研究の一番の目的であるフルカラーの実像を広い範囲から観察するということが達成できた.しかし,隠面処理に関しては十分な十分な計算が行われておらず,再生像が大きいくなった際には欠けや像の重なりなどが生じる可能性がある.また,シミュレーションソフトの作成が完成されていないため,計算したアルゴリズムの確認は出力装置で出力した後になり効率的に行えない.出力したホログラムのサイズも半径が100 mm のものであり,作成した再生装置を十分に活かしきれていない。(再生装置は半径180 mmまで対応している。)
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,隠面処理手法の改善を行う.本研究における再生像は,ホログラム面に近い再生像となっている.像を観察する際,像の後方(または前方)にホログラムがなくてはならない.このため,今回のようなホログラム面に近い像の場合,広い範囲のホログラムからの回折像が一体の像を形成している.これは,ある一領域のホログラムが様々な方向の像の情報持っていることを意味している.しかし,これまでは一領域のホログラムに対してある一視点からの物体データを用いて計算を行っていた.このため,再生される像には像の欠けや重なりが生じる可能性がある.再生像が小さい場合はこの影響が少ないが,再生像が大きくなるにつれてこの影響が顕著になるため,隠面処理の改善を行う.物体データ計算時に,ホログラム面上での計算範囲を付加することで,この問題を解決する. また,再生像のシミュレーションも本年度以降に行っていく予定である.ホログラムの出力にはサブumオーダの出力装置を用いており,その出力時間も数時間を要してしまう.このため,計算に誤りがあった場合などには出力時間や費用などに無駄が生じてしまう.効率よく研究を進めるためにも,計算した干渉縞から再生像をシミュレートすることが重要である.
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次年度の研究費の使用計画 |
2年目の計画ではレーザを利用した光学系を構築する予定であったが,高輝度のLEDを利用した光学系にしたことで,使用金額に差が生じた。 次年度はこの金額を利用して,現在再生光学系において不安定である回転ミラーの改善を図る。また,ホログラムの出力装置であるフリンジプリンタの液晶をより高解像度にする取り組みが申請者のグループで行われており,液晶を変更することによる光学部品の変更の一部に利用する予定である。フリンジプリンタは本申請における計算機合成ホログラムを出力するために用いる装置であり,より高精細に出力できるようになることで,本研究の結果とし出力するホログラムの再生像の大きさ大きくすることができ,より観察者に強い立体感を与えることができる。 また,より高解像度な計算機合成ホログラムを計算するためより強力な計算機の購入を行う.研究成果の報告として,2月に米国で行われる国際会議に出席する予定である.
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