研究実績の概要 |
前年度までの研究において,計算機合成ホログラムを用いたフルカラー像の実像を広視域で再生できることを確認した.しかし,隠面処理は分割されたホログラム面に対して,単視点の隠面処理された物体データ(3次元の点光源データ)を利用していた.ホログラムからの再生像は,物体とホログラム面を結んだ先に視点が来なければ像を観察することができない.このため,ホログラム面を視点とするホログラムであれば,計算時に分割したセグメントごとに隠面処理された物体データを用意すればよいが,ホログラム面から再生される像が近く,視点がホログラム面から離れている場合は複数のセグメントからの再生像を観察することになる.複数のセグメントから再生される像は,物体データが観察視点から生成された(隠面処理された)データではないため,像の重なりや欠けが生じる恐れがある. 本年度の研究では,隠面処理手法を改善し観察点で正しく隠面処理された像が観察できるように,点光源データにホログラム面での計算範囲を加えた.計算範囲の付加には,仮想窓と名付けた領域を設定し仮想窓の2つ端点と点光源データを結んだ直線がホログラム面と交差する範囲を計算範囲とした.この仮想窓は,再生像から等距離となる半円周上に設定しており,約1度刻みに分割している.計算範囲を付与した点光源データ用いて,約77.6 GB (718,080x108,000 pixel)の解像度を有するホログラムの干渉縞を生成した.これまで干渉縞の計算には約90分程度の時間を要していたが,本研究ではさらに約40分の時間が計算に必要となった.これは,仮想窓を用いた点光源データへ計算範囲を付加するために要した時間と,各セグメントの計算に必要な点光源データへ再分配するために要した時間である.生成した干渉縞を出力し,フルカラーの再生像を観察することができた.
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