研究課題/領域番号 |
24760286
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
越田 俊介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70431533)
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キーワード | 情報通信工学 / 制御工学 / 適応信号処理 / 狭帯域信号検出 / 可変ディジタルフィルタ / 非整数遅延フィルタ |
研究概要 |
平成25年度では,本研究者の提案法である「任意の可変ディジタルフィルタの適応制御による高品質な狭帯域信号処理」を,低消費電力回路や高速データ通信などの実用的な環境へ拡張することを想定し,これらの環境において必須とされる「数値データのビット削減」によって生ずる性能劣化を最小限に抑える方法論を与えることを目的として研究を進め,所望の成果を得た.さらに,付加的な成果として,振幅特性だけでなく遅延量の制御にも特化した可変ディジタルフィルタの高性能化につながる基礎理論を確立することに成功した.具体的な研究成果は下記の通りである. 1.数値データのビット削減に対応した方法論の確立 本手法で用いる可変ディジタルフィルタの構造に着目し,ビット削減による性能劣化を最小とする構造(たとえば丸め誤差最小構造や統計的係数感度最小構造など)を可変ディジタルフィルタに適用することを可能とし,その上で,性能劣化を最小としたままフィルタ特性を適応制御できる手法を確立することに成功した.そして,ビット削減を採り入れたシステムの計算機シミュレーションにより,一般的によく使われている手法(直接形構造に基づく可変ディジタルフィルタの制御など)よりも,提案手法の方がはるかに高い精度を得ることを確認した. 2.非整数遅延フィルタの高性能化(付加的な成果) 本研究では,遅延量の制御に特化した非整数遅延フィルタにおいて,所望の伝達関数の連分数表現に対する変数変換とその回路実現とを組み合わせることにより,上述のビット削減による性能劣化を低減でき,かつ従来よりも数学的な記述が簡単となる新しい梯子形構造の非整数遅延フィルタの合成に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度では,振幅特性を制御する可変ディジタルフィルタのみを想定してビット削減による特性劣化の低減を当初の目的としていたが,それを達成できただけでなく,遅延量の制御に特化した非整数遅延フィルタに対してもビット削減の影響を低減する手法を確立できたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,提案手法を信号処理専用のプロセッサへ実装し,通信や音声・音響などさまざまな信号処理アプリケーションへ応用することを考える.平成26年度では,まず提案手法をDSP等の信号処理専用プロセッサ上に実装することを考える.プロセッサについては様々なものが利用できるが,本研究では低消費電力の環境を重視して,固定小数点プロセッサ上での実装を重視する.このような方針にて提案手法を専用プロセッサに実装し,それを通信や音声処理に応用して,実用的なアプリケーションの観点から提案法の有効性を理論的かつ実験的に実証することを目指す. また,これまでの研究にて得られた成果を学術論文へ投稿し,およびシンポジウムでも発表することで,研究成果を広く公表していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費を執行した際に,残金が僅かに生じたため. 今年度の研究では当初の課題を達成できており,今年度の研究費は効率的に執行している.よって次年度使用額は,今年度の研究を効率的に執行したことにより発生した未使用額であり,平成26年度請求額とあわせ,平成26年度の研究遂行に使用する予定である.
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