研究課題/領域番号 |
24760299
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
栗林 稔 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50346235)
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キーワード | 電子指紋符号 / 離散型バイアス分布 / 平均化攻撃 / スペクトル拡散 |
研究概要 |
不正コピーから不正者を特定するための電子指紋技術において,利用者を識別する情報を符号化する電子指紋符号の研究と,ディジタルコンテンツに埋め込むための電子透かしの研究がある.この電子指紋技術において最も困難な課題が,結託攻撃に対する耐性である.電子指紋符号では特殊な符号化及び復号方式によって結託耐性を実現しているが,二元符号の場合には攻撃者が用いる攻撃戦略が複数存在するため,最適な復号法を適用するためには精度の高い推定器が求められていた.本研究では,この二元符号をコンテンツに埋め込む際に,電子透かし技術で一般的に用いられるスペクトル拡散法を用いることで,攻撃者が取りうる攻撃戦略を限定させ,対応する最適な復号法を実現した.しかし,最適な復号法を用いる場合には,攻撃者の人数や,付加された雑音のエネルギーの推定が不可欠であった.そこで,近似計算をうまく取り入れることで計算量の削減しつつ,これらの推定を不要とする簡便な復号法を提案した.実験の結果,最適な復号法に極めて漸近する検出性能を示すことを確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子指紋技術において結託攻撃に対するアプローチとして,スペクトル拡散技術を用いる方式と結託耐性符号を用いる方式の二種類において,並列して研究を進めることを想定していた.1年目において,個々の研究内容を進めることに成功しており,2年目においてはそれらの結果を融合させて,電子指紋システムにまとめた.これまで個々の方式を国際会議で発表しており,それらを1編の論文として集約して,この分野において世界的に最も有名なIEEE学会の論文誌に投稿し,掲載されることが決定している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した電子指紋システムは,ユーザ間で独自の電子指紋情報が含まれたコンテンツを比較する結託攻撃と,フィルタリングや非可逆圧縮などの信号処理的な攻撃に対する耐性を考慮したものであった.ここで,Kerckhoffの原理で述べられているように秘密鍵以外のすべての情報が公開されたとしても,安全性が担保されるようなシステムを構築するためには,アルゴリズムを再考する必要がある.今後は,その安全性も含めてどこまで結託耐性を維持しつつ実用的なシステムを構築できるかを考えて,細部を検討して最終的なシステム構築を行いたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
予算執行における残高の端数である. 繰越は僅かなため,次年度の予算執行に含めて使用する
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