研究課題
本研究では,電子指紋技術により海賊版のコピーから不正に関わったユーザを特定するための検出器の開発を行なってきた.無実のユーザを誤って検挙する冤罪を極めて低く抑えつつ不正者をできる限り多く検挙するために,スペクトル拡散型の電子指紋方式では,干渉成分除去と繰り返し検出の方法を提案した.疑わしいと判定されたユーザに割り当てた信号を不正コピーから逐次的に除去し,再度検出を試みることで,信号の干渉成分により埋もれていた他のユーザの信号も検出できるようにする方式である.その結果,攻撃の条件にも依存するが,100人を超える不正者であっても正しく検挙できる検出器の設計に成功した.また,その計算コストは一般的なPC環境においても100万人を超えるシステムにおいて,数秒レベルに抑えることにも成功している.結託耐性符号の検出器においては,理論的に最適な検出器を利用する場合,従来の研究では攻撃モデルと結託者数の推定が不可欠であり,その実現は実用上困難であった.本研究では,検出性能をあまり損ねることなく推定が不要な検出器の設計を行った.また,従来想定されていたマーキング仮定と呼ばれる極めて限定された符号語空間に対する攻撃モデルだけでなく,雑音による劣化も考慮した新しい攻撃モデルにおいて,信号空間も含めた特徴を活用した検出器を提案し,その有効性を示した.更には,スペクトル拡散型の方式と結託耐性符号を組み合わせることで,不正者による攻撃を平均化攻撃にモデル化できるようにシステムを構築し,その条件下における最適な検出器を提案した.加えて,推定器を不要とするため,最適な検出器の簡略化を行い,性能劣化を極めて低く抑えつつ高速で動作可能な検出器の設計に成功した.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
IEEE Transactions on Information Forensics and Security
巻: vol.9, no.4 ページ: 610 - 623
10.1109/TIFS.2014.2305799