研究課題/領域番号 |
24760303
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
廣友 雅徳 佐賀大学, 総合情報基盤センター, 特任助教 (00529795)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 誤り訂正符号 / LDPC畳込み符号 / 重み分布 / 最小自由距離 |
研究概要 |
低密度パリティ検査(LDPC)畳込み符号は畳込み符号の検査行列を低密度にして設計される誤り訂正符号であり,反復復号法によって復号することで優れた復号特性を示す.2元対称通信路や加法的白色ガウス雑音(AWGN)通信路における誤り訂正符号の性能は,重み分布(ハミング重みに対する符号語数の分布)によって評価できるが,拘束長の大きいLDPC畳込み符号の重み分布を求めることは計算量的に困難になる. 平成24年度は,LDPC畳込み符号の重み分布を効率的に計算する方法を開発した.特に,擬巡回符号に基づいて構成されるLDPC畳込み符号に対して,その検査行列の構造的特徴に着目し,拘束長が小さく,かつ符号語の距離構造が等価な符号の検査行列へ変換する方法を提案した.この方法を用いることで,LDPC畳込み符号の重み分布を求めるための計算量を削減でき,これまで計算が困難であると予想されていた拘束長が大きなLDPC畳込み符号の重み分布を求めることが可能になった.さらには,提案した検査行列の変換方法について,計算量削減の効果を数値実験と理論的解析の両面から考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では,平成24年度はLDPC畳込み符号のStopping Set分布を求める方法を開発する予定であったが,この研究を先送りして,LDPC畳込み符号の重み分布を計算する方法の開発を行った.この理由は,LDPC畳込み符号の重み分布計算の計算量削減について新しい方針が見い出せたからである.この重み分布計算法の研究成果によって,これまで計算が困難であると予想されていた拘束長が大きなLDPC畳込み符号の重み分布を求めることが可能になった.LDPC畳込み符号のStopping Set分布を求める方法は,重み分布計算法を基にして開発できるため,重み分布計算の計算量削減法を,Stopping Set分布を求める方法に拡張する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はLDPC畳込み符号の重み分布を求める方法を開発した.この方法を拡張し,LDPC畳込み符号の最小サイズStopping SetおよびStopping Set分布を求める方法を開発する.Stopping Setは2元消失通信路において復号誤りの要因となる復号器の入力パターンであり,Stopping Setを用いることで2元消失通信路におけるLDPC畳込み符号の性能が評価できる.しかし,重み分布と同様,拘束長の大きいLDPC畳込み符号のStopping Setを求めることは計算量的に困難になる.平成24年度に開発したLDPC畳込み符号の重み分布計算法を拡張し,計算量を削減したStopping Set分布の計算法を開発する.また,平成24年度の研究では擬巡回符号に基づいて構成されるLDPC畳込み符号を対象としたが,他の設計法によって構成されるLDPC畳込み符号,特に,復号特性が良いことが実験的に示されている周期的時変LDPC畳込み符号へも対象を広げ,能力評価手法の開発を進める.さらに,いくつかのLDPC畳込み符号に開発した手法を適用し,Stopping Set分布を求め,それらのLDPC畳込み符号の2元消失通信路における性能を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,LDPC畳込み符号のStopping Set分布を計算する手法を開発するために,計算サーバを複数台購入して,数値実験環境を構築し,それを用いて数値実験を行う.Stopping Set分布を求めるための計算コストは,一般に,重み分布を求めるための計算コストより大きくなるため,計算サーバを追加する必要がある.また,研究資料の収集と成果発表のために国内・国外の学会に参加するため,その参加費と旅費が必要になる.さらに,平成24年度の研究成果を論文誌に投稿するため,採録が決定したとき,その掲載料が必要になる.
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