現在,コードを用いずに無接点または無線で情報通信機器や電化製品へ電力を供給する無線電力伝送が注目を集めている.電界・磁界共振を利用した方式は,電場または磁場のどちらか一方のみを共振させて電力を伝送し,送信距離は数十cm,電力の利用効率は50~60%であり,実用化されつつある.共振型無線電力伝送の送受信アンテナとしては,放射電力が小さく,誘導磁界を容易に作ることが必要あり,アンテナとしては微小ループアンテナが考えられる.同アンテナはコイルの巻き数を変えることで,外部寸法を変えずに発生させる誘導磁界を変化させることができる.しかし,このシステムではコンデンサやインダクタンスなどの素子の値,充電中の負荷の変化および送受信アンテナ間の位置ずれが伝送効率などの基本性能に影響を与える.そのため,電力を無線により伝送する際にはできるだけ高効率で電力伝送を行えるよう,事前に伝送する周波数,電力量および回路素子の値などのデータ通信を行うことが必要である.データ通信において,この送受信アンテナの等価回路はBand Pass Filterとみなすことができ,その帯域幅は送受信アンテナ間距離によって変化する. 特にアンテナ間が近い場合には共振分裂が起こる.また複数給電では受信機間で干渉が発生し,エネルギー効率に影響を与える.そこで本研究ではデータ通信に共振分裂によるフェージングに強い広帯域OFDM信号を用いることにより,伝送エネルギーの高効率化をサポートする通信システムモデルを検討した.具体的には,無線電力伝送システムにおけるデータ信号伝送を考慮し,回路シミュレータと実験により求められたアンテナ間の伝達特性からデータ通信のための伝送帯域幅を決定した.そして,計算機シミュレーションによりその特性と伝送路の影響を明確化し,OFDM信号を用いた無線電力伝送システムの有効性と特性の限界を明らかにした.
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