研究課題/領域番号 |
24760305
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小川 将克 上智大学, 理工学部, 准教授 (90624411)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | モバイルルータ / 無線LAN / 移動通信システム / 省電力 |
研究概要 |
モバイルルータの省電力化に向けて,1) モバイルルータ内部のIP-MACのクロスレイヤ制御による省電力化,2) モバイルルータ内部の複数の無線システム間の連携による省電力化,3) モバイルルータ間の協調動作による省電力化 の3つの項目について実施した. 1)および2)では,モバイルルータ単体での省電力化であり,広く普及しているモバイルルータに導入することが狙いである.モバイルルータには,LAN側インターフェースとして,無線LANのアクセスポイント機能,WAN側インターフェースとして,移動通信システムの端末機能がある.1)では,IEEE802.11無線LANで規定される省電力制御を利用して,LAN側のIP層からMAC層へのパケットのデキュー制御を提案し, LAN側インターフェースの消費電力を削減した.2)では,個々に独立に動作するWAN側とLAN側インターフェースの省電力制御を連携させた制御方式を提案し,WAN側インターフェースの消費電力を削減した.1)と2)の組み合わせることで,LAN側とWAN側インターフェースの消費電力を削減できる.また,1)と2)の制御方法は,標準規格に準拠しているために導入が容易である. 3)では,災害現場の避難所などで,持ち寄った複数のモバイルルータを協調動作させることで,長時間動作させることが狙いである.無線LAN機器がモバイルルータに接続するときには,無線接続処理とIP接続処理の2つの処理がある.モバイルルータに接続する無線LAN端末数が増加すると,この処理時間が増加する.そのため,モバイルルータ間で接続された無線LAN端末の情報を共有する方法を提案し,処理時間と消費電力を削減した. 平成25年度は,遅延と消費電力の観点での最適化や,通信容量や通信品質を考慮した複数のモバイルルータで協調動作について検討を進める.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画である「モバイルルータに搭載された無線システムを含む機能分析,複数無線システム間連携およびクロスレイヤ連携による省電力化スケジューラの設計,および性能分析」は,おおむね順調に進展している. モバイルルータに搭載された無線システムを含む機能分析では,ネットワーク機能としてIP層,無線機能として,LANおよびWAN側インターフェースのIEEE802.11およびIEEE802.16のMAC層の省電力機能について分析した.機能分析結果を利用した,LAN側インターフェースにおけるIP-MACのクロスレイヤ制御による無線LANアクセスポイント(LAN側インターフェース)の省電力化,および無線LANの省電力機能と連携したIEEE802.16モバイルステーション(WAN側インターフェース)の省電力化のためのスケジューラを設計し,省電力化を果たした.ただし,遅延と消費電力はトレードオフの関係にあり,最適化については平成25年度の課題として進める. さらに,平成25年度の研究計画である「モバイルルータ間の協調動作による省電力化」についても,フレームワークの事前検討を行い,課題を明らかにした.主な課題は,「a) 無線LAN端末数の増加に伴う接続処理時間の増加」,「b) 協調するモバイルルータが近傍に存在しない場合における無線LAN端末からの接続」,「c) WAN側の通信容量を考慮した切り替え」などである.平成24年度では,a)の接続処理時間の削減について検討した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究課題である遅延と消費電力の最適化については,最適の定義を明確にして継続的に検討を行う.さらに,平成24年度では,既存の無線システム規格に基づいた省電力化であったために,平成25年度では,最新の無線システム規格に基づいた省電力化の検討を進める.また,モバイルルータ間の協調動作による省電力化については,平成24年度の検討において明らかになった課題である「協調するモバイルルータが近傍に存在しない場合における無線LAN端末からの接続」,「WAN側の通信容量を考慮した切り替え」についての検討を進める.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,研究調査や成果発表は,国際会議などの日程の都合上,国内のみであったために,旅費の支出が予定額よりも大幅に支出額が少なかった.平成25年度は,国際会議などでの研究調査や研究発表を推進する. また,平成25年度の物品購入としては,無線LANの標準化は日々進化しているために,新機能の動作を検証するために無線LAN機器およびモバイルルータの購入,ならびにシミュレーション評価のための環境を充実させるために,コンピュータおよびシミュレーションソフトの購入を行う.
|