研究課題/領域番号 |
24760307
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
荒井 伸太郎 香川高等専門学校, 通信ネットワーク工学科, 助教 (10599195)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 可視光通信 / LED / 災害時通信 |
研究概要 |
本研究では,天災や人災等の災害が起きた際に利用する,懐中電灯等の携帯用照明を用いた人命救助のためのLED可視光通信システムを提案する.想定環境として,電波による無線通信が不可能で,なおかつ,被災者の探索が困難な状況で,被災者自身が利用することを検討する.具体的には,障害物により散乱した送信信号の光(散乱光)を受信機側では複数光源として認識し,それらの光を集約させてダイバーシチ効果を得ることによるロバストな可視光通信を実現する. 平成24年度は,散乱光を利用した可視光通信システムを確立するために,散乱光検出・同期アルゴリズムの開発を目標に掲げた.目標の遂行にあたり,まず可視光通信の実験環境の整備に着手した.本研究では,送信機に携帯用照明を模擬した小型LED送信機,受信機に高速度カメラを用いる事を想定している.小型LED送信機は,PICと呼ばれるマイクロコントローラをLED制御装置として用いて作成した.高速度カメラは,フォトロン社のIDP-Express R2000を物品費で購入し,準備した.これらの装置を用いて,受信機でLEDの高速点滅を確認するための予備実験を実施した.実験の結果,高速度カメラで撮影した画像からLEDの高速点滅を確認することに成功した.しかしながら,PICの応答特性の影響で,点灯間隔に遅延が生じる事が画像内で多々見られた.この問題に関して現在原因を究明中であり,解決次第,早急に散乱光の発生を行い,高速度カメラでの検出を実施する. 実験環境の整備と並列して,画像処理を用いて可視光通信シミュレーションを行うためのプログラム開発を行った.現在のところ,本プログラムでは単一光源での可視光通信の模擬に成功した. 以上の可視光通信に関する研究成果の一部を,学術論文で2編,査読付き国際会議論文で2編,査読付き国内研究会論文で1編発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記【研究実績の概要】で述べたように,PICの応答特性の影響で,点灯間隔に遅延が生じる事が画像内で多々見られた.遅延が起こると,実際に可視光通信を行う際,LEDの輝度(明るさ)を取得するための画像選択を誤ってしまい,データ復調能力に影響する.この問題が解決しなければ,本研究の目的である散乱光を利用した可視光通信システムを確立することができないため,現在,実験環境の整備に注視して研究を進めている.そのため,散乱光検出・同期アルゴリズムの開発が若干遅れている. 一方,実験環境の整備と並列して行っている可視光通信シミュレータの開発は順調に進んでいる.加えて,本研究に関する研究成果も【研究実績の概要】で述べたように,順調に発表を行えている.ゆえに,平成24年度の達成度を「やや遅れている」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,前年度の課題である,PICの応答特性によるLED点灯間隔の遅延問題を早急に解決し,開発が遅れている散乱光検出・同期アルゴリズムを完成させる.実験環境の整備がさらに遅れた場合は,現在開発中の可視光通信シミュレータも用いて,散乱光検出・同期アルゴリズム開発を進めることを検討している.さらに,このアルゴリズムを基に,同期をとった複数の散乱光を集約させてダイバーシチ効果を得るためのアルゴリズムの作成に取りかかる.また,災害時を想定した環境での実験を行うことを計画している.具体的には,木材や鉄板などで疑似的ながれきを作成し,実際の災害を想定した通信実験を行う. 前年度に引き続き,平成25年度も可視光通信に関する研究調査のため,国内研究会及び国際会議に出席する予定である.加えて,得られた成果は国内研究会及び国際会議で随時発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
まず,上述した課題を解決するため,可視光通信送信機のLED制御部品を見直し,送信機の改良に研究費を費やす.また,上述した災害現場を想定した擬似的ながれき作成のための木材や鉄板等を購入し,送信光散乱装置の作成を行う.さらに,研究調査旅費(電子情報通信学会 ソサイエティ大会,総合大会 等)及び研究成果発表経費(国際会議ITST’13 等)として研究費を使用する.
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