研究課題/領域番号 |
24760307
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
荒井 伸太郎 香川高等専門学校, 通信ネットワーク工学科, 助教 (10599195)
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キーワード | 可視光通信 / LED / 災害時通信 |
研究概要 |
平成25年度はまず,前年度に作製したLED送信機で生じる「LEDの点滅速度と高速度カメラでの撮影速度との間のタイミングズレ」の問題解決に着手した.原因を調査した結果,LEDの点滅用素子の制御に用いているプログラム上での時間の定義と素子自身が持つ時間の定義が一致していないことが判明した.この問題を解決するため,プログラムの修正及び高速度カメラの撮影速度の向上等の対策を施し,ズレの軽減に成功した. さらに,平成25年度は災害時に用いた時に起こる問題への対策も検討した.本研究では,開発した送信機を災害時に被災者自身が使用することを想定している.この場合,がれきなどの障害物によってLED光が四方八方に散乱する可能性が高く,これによってLED光の減衰が生じてしまい,信号復調に影響を与えてしまう.研究計画の当初,この散乱光を利用した復調方法の開発を検討していたが,散乱光よりもまず光の減衰による影響を解決する必要があると考え,研究計画を一部変更し,障害物等で光が減衰する問題に取り組むこととした.問題解決方法を検討した結果,雑音を利用することにより微弱信号を検出する確率共鳴現象に注目し,本現象を応用することで可視光通信における課題の解決を図ることとした.その第1ステップとして,可視光通信受信機に確率共鳴を適用した簡易なシステムを作成した.光信号検出特性を調べた結果,減衰した光信号から信号の復元に成功した.このことから,可視光通信においても確率共鳴現象の効果を確認できたと言える. これら実験と並列して,画像処理を用いて可視光通信シミュレーションを行うためのプログラムの改良も行っており,平成25年度は,簡易的ではあるが,複数光源を想定した可視光通信の模擬を行うことができた. これらの研究に関する成果の一部を,学術論文で1編,査読付き国際会議論文で9編,査読付き国内研究会論文で1編発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先に記した【研究実績の概要】の通り,平成25年度は本研究課題の目的の1つであった,災害時に可視光通信システムを用いた時に起こる問題への対策を検討した.その問題解決方法は,当初の研究計画を一部変更して取り組むこととなったが,実験の結果,一定の効果を確認することができた.また,平成24年度に作製したLED送信機,及び,画像処理を用いた可視光通信シミュレーションプログラムのそれぞれの改良も平成25年度に行うことができた.さらに,得られた成果の一部を学術論文や国際会議等で発表できたことから,これらを総合的に判断して「おおむね順調」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では,まず,がれき等の障害物で減衰したLED光から信号復元するために,確率共鳴を取り入れた可視光通信システムの詳細な検討を行う.平成25年度では,確率共鳴の効果を確認する事はできたが,それらはオシロスコープを用いて定性的に確認しただけであった.そこで,今年度は定量的に確率共鳴現象による効果を確認することに努める.具体的には,確率共鳴回路から出力された波形の電力スペクトルやそれの信号対雑音比等を計算し,送信信号波形との比較を行う.さらに,先に述べた通信路の影響を受けたLED光からの確率共鳴回路による信号復元性能を解析する. これに加え,平成26年度は,災害時の障害物だけでなく,屋外の可視光通信における通信路の影響を受けたLED光についても定量的に解析する.具体的には,災害時に問題となるがれき等の障害物だけでなく,送信信号以外の光(背景光雑音),送受信機間の通信距離等も考慮し,災害時の屋外可視光通信における通信性能について実験と理論の両面から調査・検討する. また,平成25年度に改良したLED送信機についても,送受信機間のズレを軽減することはできたが,完全に無くすことはできなかったため,引き続き,送信機の更なる改良を行う. 前年度に引き続き,平成26年度も可視光通信に関する研究調査のため,国内研究会及び国際会議に出席する予定である.加えて,平成26年度は本研究課題の最終年度であるため,得られた成果を積極的に学術論文,国際会議・国内会議等で発表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の予定では,先に書いた研究業績の学会発表に加え,さらにもう一つ国際会議で研究発表を行う予定だったが,都合により,その予定していた会議に出席できなかったため,旅費及び参加費分の研究費が残ってしまった. 先に述べた【今後の研究の推進方策】に従って,確率共鳴を取り入れた可視光通信システムの詳細な検討のための実験器具,及び,屋外での実験のための器具や準備,さらにはLED送信機の改良のために研究費を費やす.また,研究調査旅費(電子情報通信学会 ソサイエティ大会,総合大会 等),研究成果発表経費(論文印刷費,国際会議OWC'14 参加費等)として研究費を使用する.
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