研究課題
近赤外光を用いた乳がん検診を行う基礎となる画像再構成法について研究を推進した.近赤外光を用いた生体イメージングは従来のX線CTやMRI画像と異なり,光の吸収や散乱を利用したイメージング法であり,血液などの生体内の細胞や組織,それらに含まれている成分の色に関する情報を提供する.がん組織では血管新生により,血液量が増加するため,光イメージングによりその検出・検査が可能になると考えられる.従来までの医療イメージングに新しい情報を加えることで診断精度の向上に役立つ.近赤外光を用いた生体内イメージングは生体内の光伝播モデルを用いた間接計測法であり,画像再構成法は光伝搬シミュレーションと,そのシミュレーションを行う際のパラメータ(光吸収係数)を測定データをできるだけ再現するように最適化する最適化計算によって成り立つ.平成25年度は生体内の光伝播を従来の光拡散方程式を用いた方法に比べてより正確にシミュレーションが行える光ふく射輸送方程式の計算方法を改善する方法として,差分法近似から有限要素法を用いた計算に切り替えるための定式化を行った.また,最適化計算については,再構成画像のぼやけを改善し,より鮮明な画像を得るためのエントロピー最小正則化法を別の生体イメージング法(脳磁場計測による脳活動のイメージング及び蛍光を用いた生体イメージング)に適用し,その効果を確認した.エントロピー最小正則化法と同様の効果が期待できるlpスパース正則化についてその効果を検証し,論文としてまとめ投稿した.近年新たに注目されている生体イメージング法である光音響イメージングについての画像再構成法にもこれまでの有限要素法による光拡散方程式を用いた光伝播シミュレーションを基にした画像再構成の研究を応用し,定量的で高い空間分解能をもつ画像再構成に成功している.
2: おおむね順調に進展している
光ふく射輸送方程式の計算方法について当初の予定からやや方針を変えているが,最終的な目標に向けて前進がみられる.画像再構成のための最適化計算については,提案手法が有用であることの検証が順調に行われている.
有限要素法を用いた光ふく射輸送方程式計算アルゴリズムを作成し,エントロピー最小正則化法と組み合わせることで,画像再構成アルゴリズムを構築する.当初の予定に従い,光計測システムを構築し,画像再構成アルゴリズムの検証を行う.
学会参加旅費の公費での支払いが認められ,繰り越された.購入予定の物品について検討中のため物品費に繰り越しが生じた.光計測システム構築のための物品と実証実験の消耗品を購入する.
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
Optical Review
巻: 20(5) ページ: 442-451
10.1007/s10043-013-0076-4
Biomedical Optics Express
巻: 4(4) ページ: 635-651
10.1364/BOE.4.000635