本研究では、高精細な生体内部の画像化を目指して、圧縮技術、生体高調波画像化法、そして分離統合法を効果的に組み合わせたリアルタイム画像化手法を提案した。 当初は乳房組織を想定していたが、他の部位においても適用可能な手法を検討した。具体的には、パルス圧縮技術、生体高調波画像化法、そして分離統合法を効果的に組み合わせたリアルタイム画像化手法を提案し、高調波成分を利用した新たな定量評価方法の検討を行った。分離統合法で複数のチャープ信号を送信しながらリアルタイムでBモード画像を生成する際、フレームレートの低下を回避することが非常に重要となる。従来のパルスによる乳腺組織の画像化にはリニアアレイ振動子が用いられる。リニアアレイ振動子を用いて符号長の長い信号を用いる倍、対象部位までの距離に応じて時間シフト処理を行った後に圧縮処理を施すため、信号長が長いと信号の一部分のみが時間シフトされ、圧縮時にエラーが発生し距離分解能が低下することが知られている。この点においても、一回あたりの信号長が短い方が有利である。分離統合法によるリアルタイムでBモード画像化を行う際においても、パルスによる画像化法と同様にリニアアレイ振動子の使用を想定する。 フェイズドアレイ振動子を用いてチャープ信号を照射する際、分離統合法を適用することでダイナミックフォーカス時に発生するエラーを低減することが可能となることを示した。また、単板振動子を用いて超音波信号を照射し、対象物体を伝搬しながら発生した高調波の位相成分を解析したところ、基本波に対する高調波の位相が周波数に依存していることを実験的に示した。さらに、チャープ信号を使用して高調波画像化法を適用する際には、これらの位相差を考慮することでより高精細な画像化が可能となる可能性を示した。
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