表面改質の分野では,材料表面の機能性を向上せさるため,「表面テクスチャ」といわれる幾何学的な微細加工を施すことがよく行われる.ただし,表面テクスチャの幾何形状と表面機能との因果関係は,材質やスケール等の因子もあって必ずしも明確でなく,これらの相関を見出すことには大きな価値がある.そこで本研究では,表面テクスチャの光反射特性から,その機能性を推定する方法の開発に取り組んだ. まず,表面テクスチャの光反射特性を簡便に測定できる魚眼カメラシステムを開発した.そして,表面テクスチャの機能性を推定するための第一段階として,単純な凹凸が繰り返し加工された表面テクスチャを対象とし,表面テクスチャの周期性と反射特性との相関を考察した.その結果,光照射領域サイズと正反射方向の輝度値には正の相関がみられた.これは加工されていない平面部分の面積が主要因であると考える.次に,光照射領域に対する穴領域が占める割合と,正反射方向の輝度値には負の相関がみられた.ただし,この相関は穴領域が10%以上のときに限られる.最後に,加工深さと反射特性との相関については,円形穴が深いほど鏡面成分が小さくなり,拡散成分が大きくなる傾向がみられた.これについては,穴底部の形状も影響しているものと考える. 今後は,円形穴以外の表面テクスチャに対して,多方向から観測した反射特性との相関を解析する必要がある.また,光線追跡法などを用いて,表面テクスチャと反射特性の相関を理論解析する必要がある.ただし,実際の測定対象物体は基材自体に研磨痕などがあり,必ずしも完全鏡面とはなっていないため,表面形状のモデリング方法をあわせて検討する必要がある.
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